ジャズ作曲家・挾間美帆、ポップミュージックにおける日本人初のグラミー賞受賞なるか。

  • 文:中安亜都子

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挾間美帆(はざま・みほ)●国立音楽大学演奏・創作学科作曲専修卒業。2012年『ジャーニー・トゥ・ジャーニー』でデビュー。16年に米国の権威あるジャズ誌『ダウンビート』の「未来を担う25人のジャズ・アーティスト」にアジアで唯一選出された。さらに19年、米国の有力紙『ニューヨーク・タイムズ』が選ぶ「2019年のベスト・ジャズ・アルバム」に最新作『ダンサー・イン・ノーホエア』が紹介され、同作は本年度のグラミー賞Best Large Jazz Ensemble部門にノミネートされた。

いよいよ2020年のグラミー賞が1月27日に発表となる。さまざまなアーティストのノミネーションが話題になる中で日本人として気になるのは、ジャズ作曲家の挾間美帆の最新作『ダンサー・イン・ノーホエア』が Best Large Jazz Ensemble(大規模ジャズ・アンサンブル)部門でノミネートされていることだ。これまでにも日本の音楽家がグラミー賞にノミネート、さらに受賞したことは少なくない。クラシックでは小澤征爾や内田光子が受賞している。しかし、ジャズやロックの受賞作は米国人他との共演作。もし彼女が受賞すれば、ポピュラー・ミュージックのジャンルで、かつ単独のオリジナル作として日本人初となる。

挾間は8年前のデビュー当時からジャズ界の急先鋒として高い評価を得てきたが、ここ数年はさらに注目度が高くなっている。その例として米国の有力紙『ニューヨーク・タイムズ』の「2019年のベスト・ジャズ」に最新作が選出されたのは記憶に新しいところ。活動の場も国際的になり、デンマーク国立放送ビッグバンドの首席指揮者に任命され、同バンドとは最近レコーディングも行ったとのこと。また数年前よりオランダのメトロポール・オーケストラ・ビッグバンドとも共演し、ジャズの伝説的ピアニスト、セロニアス・モンクのトリビュート作をリリースしている。このアルバムではアレンジを担当、指揮台でタクトを振っているのも彼女だ。クラシック音楽を学ぶために音楽大学に通っていた彼女が、ジャズに興味をもったのはキャンパス内で大学のビッグバンド、ニュータイド・オーケストラの演奏を耳にしたのがきっかけ。2012年のデビュー以降の活躍は破竹の勢いで、まだ8年目であるのに活動歴は書き切れないほどだ。そして今回のグラミー賞のノミネーショーンである。これは、ここ数年の活動の最も大きな花になることだろう。受賞を期待したい。

15人編成のアンサンブルから生まれるハーモニーの妙に耳を傾けよう。変則的なリズム、斬新な楽想に才能が光る。高音、低音をそれぞれ活かしたバランスのいいアレンジにも注目。世界が注目する21世期のジャズ。溌剌とした躍動感に圧倒される。『ダンサー・イン・ノーホエア』挾間美帆 UCCJ-2162 ユニバーサル クラシックス&ジャズ ¥3,300(税込)