マンモスはいよいよ蘇るのか?! 日本科学未来館『マンモス展』で、その未来を考える。

  • 文:はろるど

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「ユカギルマンモス」の冷凍標本。展覧会のために特別につくられた、マイナス20度を保つガラスケースの中で公開されています。

いまから500万年前もの太古の時代に生息し、約4000年前に絶滅したマンモス。北極圏が面積の4割を占めるシベリアのサハ共和国(ロシア連邦)では、地球温暖化の影響で溶解しつつある永久凍土から、次々と冷凍状態のマンモスが発掘されています。

日本科学未来館の「マンモス展 その『生命』は蘇るのか」では、世界初公開となる「ケナガマンモス」の鼻や皮膚をはじめ、マンモスの冷凍標本を展示。2005年の『愛・地球博』で、700万人の観客を釘付けにしたという「ユカギルマンモス」の頭部までここに来ています。大きな牙を突き出し、目を伏して深い眠りにつく姿には、畏怖の念すら覚えます。

実はいま、このマンモスを現代に復活させるプロジェクトが日本で進行中です。2019年3月、近畿大学を中心としたチームは、完全な状態で発掘された冷凍マンモス「YUKA(ユカ)」の細胞核をマウスの卵子に注入した際に一部が細胞分裂の直前まで変化したことから、凍結して傷ついていたDNAが修復された可能性があると発表しました。もちろんまだ不完全で、復活への一歩に過ぎませんが、近い将来、マンモスを蘇らせることも夢ではないかもしれません。

しかし、ここで一度立ち止まって考えてみることも重要です。たとえマンモスが蘇ったとしても、現代の生態系にどのような影響を及ぼすのかまったく予測不可能。クローン技術の延長上には、社会の合意のないまま人へ転用される懸念も拭えません。

「絶滅した生き物を本当に蘇らせてよいのだろうか?」

そうした生命倫理への問いかけが、この『マンモス展』では投げかけられているのです。

「ユカギルマンモス」の復元模型。脚に「2XXX」年のタグが取り付けられた、クローンマンモスをイメージして展示されています。一連のマンモスの復活に関する研究については、写真やイラスト付きの解説パネルでわかりやすく紹介されています。

「ケナガマンモスの鼻」3万2700年前。2013年に発掘された、極めて状態のよい冷凍標本。一般的にマンモスの鼻は骨がなく柔らかな組織のため、死亡すると腐敗して失われてしまいます。しかし、このマンモスはすぐに凍りついたと考えられており、肉体の組織が残りました。photo:Harold

上から、「ケナガマンモスの皮膚」3万1150年前、「仔ウマ『フジ』」4万1000〜4万2000年前。よくよく見ると、マンモスの皮膚に毛穴が残っています。「仔ウマ『フジ』」は世界で唯一、古代ウマの完全な形を留めた冷凍標本で、古生物学史上、初めて液体の血液と尿も採取されました。photo:Harold

企画展「マンモス展」-その『生命』は蘇るのか-

開催期間:2019年6月7日(金)~11月4日(月・休)
開催場所:日本科学未来館
東京都江東区青海2-3-6
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時~17時 ※入館は閉館の30分前まで。
休館日:火 ※但し夏休み期間中(7月23日〜8月27日)の火曜と10月22日は開館
入場料:一般¥1,800(税込)
www.mammothten.jp