水との戦いの歴史を刻むシェルター、 「水屋・水塚—水防の知恵と住まい—展」開催中。

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    「城構えの家」中野邸(徳島市北島町)。吉野川下流に位置する北島町は、旧吉野川と今切川に囲まれているため、昔からたびたび水害に見舞われた。江戸時代から地主を務めてきた中野家も、城構えの趣ある姿を維持している 。写真:大西成明

    人の背を超すほど、高く積み上げられた石垣や盛り土を「水塚」、その上に建てられた蔵を「水屋」といいます。かつて頻繁に洪水に見舞われた地域では、こうした水防建築が身を守る避難場所として建てられ、独特な景観をつくっています。水防建築の写真を中心に、川とともに生きてきた日本人の住まい方の知恵を紹介する「水屋・水塚—水防の知恵と住まいー展」が11月26日(土)まで、東京のLIXILギャラリーで開催中です。

    中部の木曽三川、関東の利根川や荒川、四国の吉野川流域など、全国の主な洪水常襲地域にみられる10種類の河川伝統技術にクローズアップ。写真家・大西成明氏による撮り下ろし写真を中心に、それぞれの河川流域や技術の特徴などの解説を添えて紹介。現代、川への意識が薄れてきている中、水防建築はその数を減らしていますが、現存する建物は水害の記憶を刻む生き証人として美しくその姿を留めています。温暖化がもたらす異常気象による堤防の決壊など、現代においても予想不可能な水害を目にする機会も多くなりました。水防建築は果たして、建築遺産なのか。そこには現代人が洪水から身を守るためのヒントであり、先人からのメッセージが込められているように思えてなりません。(阿部博子)

    辻邸の水屋・水塚 (岐阜県大垣市米野町)。洪水常襲地帯であった木曽三川流域の輪中にある。輪中とは堤防に囲まれた集落のこと。辻邸の水屋は大正 15 年に建てられた。この地域は「伊吹おろし」の季節風が激しいため、風雨から保護する目的で土壁を板張りにしている水屋が多いのが特徴。写真:大西成明

    旧名和邸(輪中生活館・大垣市重要有形民俗文化財)母屋の土間。天井から逆さに吊るされている「上げ舟」がみえる。洪水の危険が知らされると真っ先に下ろされ、家の前の舟繋ぎの木に縛って、最終的な避難手段を確保する。写真:大西成明

    「段蔵」松村邸(大阪府高槻市)。最も高い蔵は地面から 2.5m もある。納める物の重要度、利用頻度を考えて、どの高さの蔵に何を置くかが決められていた。(一番高い蔵は衣装蔵)写真:大西成明

    「水屋・水塚—水防の知恵と住まいー展」

    2016年9月8日(土)~11月26日(土)
    LIXILギャラリー
    東京都中央区京橋3-6-18東京建物京橋ビルLIXIL:GINZA2F
    TEL:03-5250-6530
    開催時間:10時~18時
    休館日:水曜日
    入場無料

    http://www1.lixil.co.jp/gallery/