「ママに会いたい」の一心で街を彷徨う幼き兄弟の姿を描く、『ぼくらの家路』。

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    事情もよくわかっていないマヌエルを守りながら、母ザナを探すジャック(左)

    主人公は10歳の男の子ジャック。シングルマザーである母親のザナは子を放っておくことも多いため、母に代わって弟マヌエルの世話をする優しい少年です。ある日、家に鍵をかけたまま姿を消してしまった母ザナを探そうと、ジャックはマヌエルを連れてベルリンの街を彷徨います。

    ザナは自由奔放というか無責任というか、とにかくひどい母親。夜、友人とまだ遊び足りないからと、連れてきたジャックとマヌエルを2人で家に帰らせたり、家に連れ込んだ男とのセックス中にジャックが目を覚ませば、裸のまま夜食を与えて平然としていたり。姿を消したのも、どうやら新しい男に夢中になっているのが理由のようです。そんな母親でも、優しい時は天使のようで、ジャックとマヌエルにとっては唯一無二の存在。「ママに会いたい」という2人の切実な思いが胸を打ちます。

    ジャックを演じたイヴォ・ピッツカーの演技が、この映画を見ごたえある素晴らしいものにしています。自らの身や6歳の弟を守らなければいけないという緊張感。母がいないという状況に対する不安や悲しみ。母にもうすぐ会えるという期待――。そんなさまざまな心情を、表情や視線で巧みに表しています。母と弟を思う優しさと、母親探しの旅を続けるうちに増していくたくましさに触れ、ジャックを応援する気持ちはどんどん強くなっていくことでしょう。監督が用意したラストシーンに、みなさんはどんなことを思うでしょうか?(Pen編集部)

    親として失格の部分も多いザナ(中央)だが、ジャックとマヌエルにとってはかけがえのない存在。

    ©PORT-AU-PRINCE Film & Kultur Produktion GmbH

    靴紐が緩めば結び方を教えてあげる、弟思いのジャック。

    『ぼくらの家路』

    監督/エドワード・ベルガー

    出演/イヴォ・ピッツカー、ゲオルグ・アームズ、ルイーズ・ヘイヤーほか

    2013年 ドイツ映画 1時間43分 配給/ショウゲート

    9月19日より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開。

    http://bokuranoieji.com