沖縄の弔いの美に心打たれる、日本民藝館『祈りの造形』展。

沖縄の弔いの美に心打たれる、日本民藝館『祈りの造形』展。

文:はろるど

「厨子甕」 琉球王朝時代 大半の厨子甕はガラスケースなしで展示されている。ずらりと並ぶ光景は、なんとも厳かだ。

沖縄は、東シナ海の中継地として栄え、日本と中国、朝鮮半島や東南アジアの国々と交流しながら、独自の文化を育んでいった地だ。日本民藝館の創始者、柳宗悦は沖縄を4度訪ね、伝統的な手仕事や風土などを調査しては、展覧会や雑誌『工藝』に成果を発表してきた。

柳が沖縄で関心を寄せた文化のひとつに、人の弔いがある。かつての沖縄では、遺体を墓室内に安置して風化させた後、取り出して骨を水で洗い蔵骨器に入れ、再び骨を墓室へと戻すという洗骨と改葬の習わしがあった。その蔵骨器こそ、「厨子甕(ジーシガーミ)」だ。日本民藝館で開催中の特別展『祈りの造形』では、新たに寄贈を受けた25基と新蒐集の2基を含む、計34基の厨子甕を一堂に展示。曼荼羅や円空仏など日本の仏教美術も併せて展示され、沖縄をはじめとする全国各地の祈りが生んだ造形の美が見られる。

単に厨子甕と言っても、形や意匠は実に多彩だ。まず家のような御殿型と甕(かめ)型に分かれていて、素材も凝灰岩(ぎょうかいがん)やサンゴ石灰岩、それに陶器とさまざま。陶器も、釉薬が施されず、ざらざらとした質感を見せているものもあり、同じ厨子甕はひとつとして存在しない。重要なのは、随所に刻まれた装飾だ。たとえば幅1mを超える屋根に鯱(しゃち)や鬼面を載せ、前後に蓮華の文様や仏像をレリーフに表した、デコラティブな意匠のものには大いに目を奪われる。装飾には被葬者の情報が反映されており、より豊かな装飾を見せる御殿型の厨子甕は、上層階級の人間のものだったと言われている。

柳が初めて訪ねた1938年当時、沖縄は経済的な苦境に立たされながらも、豊かな自然は保たれ、伝統文化も残されていた。しかし数年後、戦争で取り返しのつかないほどの壊滅的な被害を受けてしまう。その史実を省みながら、沖縄の人々が深い祈りを込めた厨子甕を見ていると、その美しさに胸が締め付けられる。

「厨子甕」 琉球王朝時代 よりプリミティブな造形をした厨子甕。念仏を唱えるかのような人物のしぐさが興味深い。

『熊野本地絵巻断簡(部分) 』室町時代 天竺(インド)から飛来してきた神が熊野権現の起源とする説話を描いた絵巻。おかしみのある描写に心惹かれる。新蒐集品。

円空「岩堂大権現像 」1686年頃 木喰仏を熱心に研究したことで知られる柳だが、円空仏にも比較的早い時期から注目していた。にこりと笑うような表情に、観る側の心も安らぐ。

『祈りの造形 沖縄の厨子甕を中心に』

開催期間:2020年1月12日(日)~3月22日(日)
開催場所:日本民藝館
東京都目黒区駒場4-3-33
TEL:03-3467-4527
開館時間:10時~17時 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(祝日の場合は開館、翌火曜休館)
入場料:一般¥1,100(税込)
www.mingeikan.or.jp

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