感染注意! ‟平成”が生んだ稀有な才能・星野源の新作は、彼の根幹に触れるソウルミュージックです。

  • 文:赤坂英人

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星野源『POP VIRUS』 ビクターエンタテインメント   VICL-65085 ¥3,348(税込)

ある時はNHK「紅白歌合戦」に出場し、またある時は大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」で役者として演じる……。そして2019年の2月~3月は、5大ドームツアーを行う星野源。ミュージシャンであり、同時に俳優、文筆家と複数の横顔をもつ彼は、平成という時代が生んだ稀有な才能のひとりと言っても過言ではないでしょう。

その彼が18年末にリリースした5枚目のソロ・アルバム『POP VIRUS』は、どんなものにでも変身できる星野の可能性を象徴するアルバムとなっています。前作『YELLOW DANCER』から約3年ぶりとなるこの新作は、大ヒットとなった「恋」や「Family Song」、NHK朝の連続テレビ小説『半分、青い。』のテーマ曲となった「アイデア」、ドコモのCMソングにも使われている「サピエンス」など全14曲を収録した、細かな音づくりを存分に積み重ねたアルバムとなっています。

2010年に発表された彼の最初のソロ・アルバム『ばかのうた』を思い出すと、8年という歳月の中で、遠いところまで来たなという思いもします。しかし同時に、星野の成長はこの程度では終わらない、彼はまだまだ成長し、進歩し続けるだろうとも思います。

そして新作アルバム全体に漂う、どこか懐かしいグルーヴ感と一瞬未来を予感させるような疾走感。それを体現しているのが、アルバムのタイトルにもなっている冒頭の曲「Pop Virus」でしょう。MPCプレイヤーとして注目されるSTUTS(スタッツ)の弾くビートトラック、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)のベース、長岡亮介(ペトロールズ)のギターと、星野が信頼するミュージシャンたちをバックに歌われるこの曲は、多彩な表現者である彼の、感受性の根幹に触れるソウルミュージックです。それは魅力的なポップサウンドとなっています。時代が生んだ稀有な才能の歌を、ぜひ聴いてみてください。でもそうすると貴方も、彼が作詞作曲した歌が、いつも頭のなかでへヴィ・ローテーションするというウイルスに感染するかもしれません。くれぐれもご用心を。