トリュフォーが“ヒッチ先生”のテクニックをすべて解き明かす! 映画づくりの伝説的バイブルをご存じですか?

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    現在、公開がスタートし、来年春まで、全国で順次公開されるドキュメント映画『ヒッチコック/トリュフォー』をご存じでしょうか。

    1962年、「ヌーヴェルバーグの旗手」フランソワ・トリュフォー監督が、「サスペンスの神様」アルフレッド・ヒッチコックに、彼の映像テクニックと映画理論を詳細に解説してもらうという、50時間分にもおよぶインタビューを行いました。この記録は66年に、書籍『定本 映画術 ヒッチコック/トリュフォー』として出版され、世界中の映画作家や映画ファンのバイブルになりました。映画『ヒッチコック/トリュフォー』は、その時、録音された貴重な音源と取材風景写真を使い、加えて、その後20年にわたる二人の友情を映し出したドキュメタリー作品です。

    この映画の基礎となった書籍『定本 映画術 ヒッチコック/トリュフォー』は、日本でも81年に出版され、累計で約7万部を記録しているロングセラーです。

    本書は、ヒッチコック・マニアのトリュフォーが520枚の写真を駆使し、華麗な映画術と映画人生のすべてを、さまざまな角度から質問するというインタビュー形式。テーマは、無声映画時代の処女作から晩年の最終作にいたるヒッチコック作品です。ヒッチコックが考えだした、観客を恐怖に陥れるストーリー展開のからくり、そして凄まじいディテールへのこだわりとは? もちろん、細かな技法や創案法まで専門的な話も多いのですが、映画に携わる職業人だけでなく、一般の映画ファンにも興味深い話ばかり。文章中、ヒッチコックを“ヒッチ先生”と呼ぶトリュフォーの姿は、まるで教師と生徒のようですが、この本自体、世界中のエンターティメント映画ファンが映画理論を学ぶために、一度は目にしている「教科書」といってよいでしょう。

    近年、CGを始めとするデジタル技術の導入で大きく様変わりしているエンターティメント映画ですが、その基本となる創作術は普遍的。この冬、そんな知的好奇心を満足させる「教科」を学んでみたらいかがでしょうか。これから新時代に突入していく、エンターティメント映画の見方が、ちょっとだけ変わるかもしれませんよ。(幕田けいた)

    『定本 映画術 ヒッチコック/トリュフォー』(90年改訂版)

    著者:アルフレッド・ヒッチコック、フランソワ・トリュフォー
    訳:山田宏一、蓮實重彥
    定価:¥4,320
    出版社:晶文社