フランス映画の名匠×西部劇=骨太人間ドラマ、『ゴールデ...
文:細谷美香

Profile : 映画ライター。コメディや青春映画から日々の生きるエネルギーをもらっている。クセが強くて愛嬌がある俳優に惹かれる傾向あり。偏愛する俳優はニコラス・ケイジです。

フランス映画の名匠×西部劇=骨太人間ドラマ、『ゴールデンリバー』に見るヒット映画の方程式。

正反対の性格の殺し屋の兄弟。弟チャーリーを演じるのはホアキン・フェニックス(左)、兄イーライを演じるジョン・C・ライリー(右)です。Ⓒ 2018 Annapurna Productions, LLC. and Why Not Productions. All Rights Reserved.

『預言者』『ディーパンの闘い』などで知られるカンヌ国際映画祭の常連監督、ジャック・オーディアール。フランスの名匠が新作の題材に選んだのは、意外なことにハリウッド俳優たちを迎えた西部劇。でもこの映画を観終わる頃には、まったく意外ではなかったことに気付かされます。

ゴールドラッシュの時代のオレゴン。殺し屋の兄弟「シスターズ・ブラザーズ」の兄イーライと弟チャーリーは、ある権力者からの依頼によって、連絡係のモリスとともに黄金の見分け方がわかる化学者のウォームを追跡することに。やがて彼らの間には奇妙な友情が芽生えていきますが……。

骨太な人間ドラマに定評のある監督が手がけたウエスタンらしく、派手な描写に頼ることなく、それぞれの思惑をもつ男たちの交流を、美しく乾いた空気のなかでじっくりと描き出していきます。度胸のあるリーダー気質の弟と、そろそろ殺し屋を引退したいと思っている兄。大金を手に入れて「野蛮な世界を終わらせ、理想郷をつくる」という夢をもっているウォームと、その夢に共鳴していくモリス。色合いの違うロマンと欲望をもつ男4人の物語は、魅力的なキャストによってより奥行きのあるものになっています。

血気盛んでありながらどこか庇護欲をそそられる弟・チャーリーを演じるのはホアキン・フェニックス、身の回りの世話を引き受けている温厚な兄・イーライにジョン・C・ライリー。人を魅了する化学者にリズ・アーメッド、男の友情を知っていく孤独なモリスにジェイク・ギレンホール。気になる俳優がひとりでもいる場合は、映画館に足を運んで大正解! 何よりジョン・C・ライリー推しの人には、満足すること間違いなしの1本としておすすめしたい作品です。ときに過酷な旅にほのかなユーモアが漂うのは、歯磨きのシーンだけでも和ませてくれる彼の愛すべき存在感があればこそ。原題は『ザ・シスターズ・ブラザーズ』。兄弟愛を軸に、男の友情やユートピアへの憧れを重層的に描き出した、ラストも含めて異色のウエスタンに仕上がっています。

ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)を受賞した、フランス人監督によるウエスタン。Ⓒ 2018 Annapurna Productions, LLC. and Why Not Productions. All Rights Reserved.

撮影監督、ブノワ・デビエによる美しい映像も見どころのひとつ。Ⓒ 2018 Annapurna Productions, LLC. and Why Not Productions. All Rights Reserved.


『ゴールデン・リバー』

監督/ジャック・オーディアール
出演/ジョン・C・ライリー、ホアキン・フェニックス、ジェイク・ギレンホール、リズ・アーメッドほか
2019年 アメリカ・フランス・ルーマニア・スペイン・ベルギー合作映画 2時間 
7 月 5 日より TOHO シネマズ シャンテほかにて公開。

https://gaga.ne.jp/goldenriver

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