ただいま公開中! 映画『グロリアの青春』を観ながら、老いた自分を考える。

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    誰だって歳をとる。そのときに、綺麗で理想的な人生を送っている人は何人いるのでしょう? 映画『グロリアの青春』は、結婚、出産、子育てを経験後離婚した、58歳の女性、グロリアの日常をドキュメンタリータッチで描きます。中年の独身者たちが集まるダンスホールの常連となり、出会いを求め、年上の男性と出会い、一夜を共にする。熟年ふたりのベッドシーンは、たるんだ皮膚やしわ、男性がお腹の手術跡にまいたサポーターのマジックテープをビリビリと剥がす所作など、若い男女のそれとは明らかに違うリアリティがあります。けれども、グロリアはとてもチャーミングで輝いて見える。もちろん、彼女には、娘が巣出つ悲しみ、隣人の騒音に悩まされる日常、男性を独り占めしたい欲などさまざまな悩みや問題があります。パートナーの男性にも、離婚した元妻や娘からどうしても離れられない寂しさにも似た気持ちがあります。登場人物それぞれがそれぞれの悩みと問題と小さな希望を抱き、ストーリーは、まるで自分以外の誰かの人生をこっそりとのぞき見するかのように進みます。観ていて面白いのは、綺麗で「理想」的な人生というのは、きっとないのだろうな、と思うこと。「理想」とは、いかにいまを笑って生きられているか、ということなのではと考えさせます。(Pen編集部)

    監督は、本作によって世界中の注目を集めることとなったセバスティアン・レリオ。スペイン・チリ合作のこの映画は、2013年ベルリン国際映画祭の公式上映で10分間のスタンディングオベーションを浴び、みごと銀熊賞、主演女優賞に輝きました。グロリア演じるパウリーナ・ガルシアは、チリのテレビや映画、舞台で活躍するベテランの人気女優。相手役であるロドルフォを、やはり名優のセルヒオ・エルナンデスが演じています。

    『グロリアの青春』

    監督:セバスティアン・レリオ
    出演:バウリーナ・ガルシア、セルヒオ・エルナンデス
    2013年 スペイン・チリ映画 1時間49分
    配給:トランスフォーマー
    3月1日(土)から、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開中。