アメリカ近代写真のレジェンドの作品が集まる『ギルバート・コレクション展』は、オリジナルプリントの質感に思わず息をのみます。

  • 文:小川 彩

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エドワード・ウェストン『ヌード』1936年 京都国立近代美術館所蔵 ©︎ Center for Creative Photography, Arizona Board of Regents

東京・六本木の東京ミッドタウンに隣接するフジフイルムフォトサロン内のギャラリー「フジフイルム スクエア」で、『アメリカ近代写真の至宝  ギルバート・コレクション展』が2018年11月28日まで開催中です。「写真表現の源流は、ここにある。」と力強く謳うとおり、アメリカの近代写真の歴史をつくった10名のレジェンドによる貴重なオリジナルプリント約70点が展示されています。

本展では、アルフレッド・スティーグリッツ、ポール・ストランド、アンセル・アダムス、イモジェン・カニンガム、エドワード・ウェストン、ブレット・ウェストン、ウィン・バロック、アーロン・シスキン、マイナー・ホワイト、そしてハリー・キャラハンが、互いに影響を受けながら、1900年代から70年代にかけて確立されたストレートフォトグラフィの発展に寄与してきた軌跡を俯瞰することができます。

ギルバート・コレクションは、アメリカのアーノルド&テミー・ギルバート夫妻が約20年間にわたって収集した世界屈指の写真コレクションです。シカゴに住んでいた夫妻は、まだ写真の価値が確立されていなかった60年代に、『タイム』誌などで知った写真家たちを直接訪ね、「あなたの写真を生活の中に置きたい」と直談判したそう。シスキンには「写真を買うんですか?」と驚かれたというエピソードもあるほど、社会でまだ価値を十分に認められていない時代に写真に注目した夫妻。写真家たちと交友を重ねながら、彼らのオリジナルプリントを収集すると同時に、自宅をギャラリーとして開放し、写真の芸術的価値の理解を広めました。

デジタル写真が当たり前となり、表現やメディアも多様になった現在においてなお、ギルバート・コレクションの銀塩写真は、光と影がつくる無限の表現と奥深さで私たちを魅了してやみません。その理由は、アーノルドが自らもカメラを手にし、後年には印画紙に物を置いて直接感光させるフォトグラムのアーティストとして作品を数多く残した側面と、決して無縁ではないでしょう。

本展の額装は低反射アクリルを使用しているため、印画紙上に再現された微妙な階調や表現から、写真家の思いまで感じ取れるようです。マスターピースを至近で堪能できる、充実の展示をお見逃しなく。

アンセル・アダムス『月とハーフドーム、ヨセミテ・ヴァレイ』 1960年 京都国立近代美術館所蔵 ©︎The Ansel Adams Publishing Rights Trust

イモジェン・カニンガム『写真家アルフレッド・スティーグリッツ』 1934年 京都国立近代美術館所蔵 ©︎2018 Imogen Cunningham Trust. All rights reserved.

ストレートフォトグラフィ初期の貴重な作品。アルフレッド・スティーグリッツ『三等船室』 1907年 京都国立近代美術館所蔵

1986年に京都国立近代美術館に寄贈された1050点のオリジナルプリントで構成される、ギルバート・コレクション。厳選された70枚のオリジナルプリントを間近で鑑賞できる、またとない機会です。

エドワード・ウェストン『貝』 1927年 京都国立近代美術館所蔵 ©︎Center for Creative Photography, Arizona Board of Regents

『アメリカ近代写真の至宝  ギルバート・コレクション展』

開催期間:2018年11月9日(金)〜11月28日(水)
開催場所:フジフイルム スクエア
東京都港区赤坂9-7-3
TEL:03-6271-3350
開場時間:10時〜19時 ※入場は閉場10分前まで
会期中無休
入場無料
www.fujifilmsquare.jp