Penが選んだ、今月の注目カルチャー

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    クリエイティブを刺激する、本、映画、音楽を紹介する「Penが選んだ注目のカルチャー」。注目すべき作品を、一挙にご紹介します。



    [BOOK/本] 文:今泉愛子

    各地の風土から生まれた、「麺」の文化史を掘り起こす。
    『そばうどん知恵袋111題』

    そばのもり汁とかけ汁の違い、引っ越しそばの由来、そば湯は重宝されるのに、うどんのぬき湯は言葉自体が役に立たないもののたとえとして使われるのはなぜか。そばとうどんにまつわるQ&Aを網羅した本書。さらに、きしめんや素麺、冷麦についても解説する。面白いのは、岩手の椀子そば、山形の板そば、新潟のへぎそば、出雲の割子そば、秋田の稲庭うどんや讃岐うどん、山梨のほうとうなど地方の麺の紹介。風土を活かした麺の描写を読むと、どれもいますぐ食べてみたくなる。

    そばうどん編集部 編 柴田書店 ¥1,944(税込)

    悪態をつけるのはいい職場⁉ ちくしょう!にも効用がある。︎
    『悪態の科学 あなたはなぜ口にしてしまうのか』

    「ちくしょう!」「ふざけんな!」。思いもよらない事態に遭遇した時、不意に口から出てしまう悪態は、人間にとってどんな意味があるのか。著者は心理学や神経科学をもとに考察する。悪態は、必ずしも人間関係にダメージを与えるとは限らない。気軽に悪態をつく関係が成立している職場の方が働きやすいという調査結果もあるし、痛みを感じた時は、悪態をつくと痛みに耐えやすくなるのも事実。悪態はこれからもなくならないのかも⁉

    エマ・バーン 著 黒木章人 訳 原書房 ¥2,376(税込)

    微妙な距離感にヒリヒリする、気鋭詩人の待望の新作。
    『天国と、とてつもない暇』

    詩を通じて言葉に対する新しい感覚を呼び覚ます最果タヒの最新詩集。一作ごとに縦書きや横書き、改行位置や行間隔を自在に使い分けてリズムをつくる詩の世界は健在だ。“みんなのことがあまり好きじゃない、ということがばれないようにしたくて、”と始まる「かるたの詩」、“中途半端な人生は近似されてなかったことになる歴史のなかで、私たちは何がしたかったのかな”と問いかける「花屋の詩」など、他人や社会、あるいは自分自身との距離の置き方の独特の感性に、ヒリヒリする。

    最果タヒ 著 小学館 ¥1,296(税込)

    [CINEMA/映画] 文:細谷美香

    ペプシのCMから誕生した、青春スポーツコメディ
    『アンクル・ドリュー』

    プロをあきらめ、ストリートバスケ・チームのコーチをしている青年、ダックス。伝説的なバスケ選手だった老人との出会いをきっかけに、新たなチームをつくって大会に挑んでいく。NBAのスター選手、カイリー・アービングが老けメイクで登場したペプシのCMのキャラクター、「アンクル・ドリュー」を主要キャラに映画化。『ドラムライン』のチャールズ・ストーン3世監督が手がけた、熱さと笑いが同居するスポーツ映画だ。


    監督/チャールズ・ストーン3世 出演/カイリー・アービング、リル・レル・ハウリーほか 
    2018年 アメリカ映画 1時間43分
    TOHOシネマズ シャンテほかにて公開中。

    Motion Picture Artwork Ⓒ2018 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

    落ちこぼれインテリ集団の逆襲。
    『いつだってやめられる 闘う名誉教授たち』

    ドラッグを開発した罪で服役している神経生物学者のピエトロ。捜査協力としてドラッグ製造者を調べるうち、ある男が神経ガスを使ったテロを計画していることを突き止める。イタリア版『ブレイキング・バッド』と称され、日本でもヒットしたシリーズの最新作。落ちこぼれインテリ集団の理系ネタと、悲喜こもごもの人間ドラマ、ダイナミックな展開を融合。風刺が冴えわたる、痛快なシリーズのついに完結編だ。


    監督/シドニー・シビリア 出演/エドアルド・レオ、ルイジ・ロ・カーショほか 
    2017年 イタリア映画 1時間42分 
    Bunkamuraル・シネマほかにて公開中。

    ©2017 groenlandia s.r.l. / fandango s.p.a.

    スリリングに暴かれていく、国連史上最悪のスキャンダル
    『バグダッド・スキャンダル』

    2002年、国連事務次長特別補佐官に任命されたアメリカ人青年のマイケル。経済制裁の影響で貧困にあえぐイラクの民間人を救うために立ち上げられた、「石油と食料を交換するプロジェクト」を担当することになるが……。国連職員の経歴をもつ作家が執筆した小説を映画化。国連史上最悪のスキャンダルとも言われる巨額の汚職事件の裏側を、スリリングかつ重厚感あふれるタッチで暴いていくポリティカル・サスペンスだ。


    監督/ペール・フライ 出演/テオ・ジェームズ、ベン・キングズレーほか 
    2018年 デンマーク・カナダ・アメリカ合作映画 1 時間46 分 
    シネマカリテほかにて公開中。

    ©2016 CREATIVE ALLIANCE P IVS/ BFB PRODUCTIONS CANADA INC. ALL RIGHTS RESERVED.

    [MUSIC/音楽] 文:山澤健治

    ザ・スミスの再来? 驚異の再生回数を誇る新人が登場。
    『チェンジス』

    豪ニューキャッスル発のインディ・ロック4人組による初フルアルバム。揺らぎのあるギターサウンドを軸とする、ネオアコとサーフロックの邂逅サウンドは心地よくローファイで爽やかな風を耳に運ぶ。憂いを帯びたボーカルが紡ぐメロディもポップセンス豊かで、インディーズとしては驚異的な再生回数を叩き出した彼らの逸話にも納得。ザ・スミスの再来というのも過言ではない話題の新人だ。

    バケーションズ AMIP-0153 インパートメント ¥2,376(税込)

    和の音使いも独創的な、遊び心あるエレクトロ・ポップ
    『トヨム』

    想像でつくり上げたカニエ・ウェスト妄想作で世界に衝撃を与えてからはや2年、京都出身プロデューサーのデビュー盤がついに登場。京都に伝わるわらべ唄を大胆にサンプリングし、その叙情性をビート・ミュージックと融合させた先行シングルから「監獄ロック」の奇天烈カバーまで、ファニーでキュートでカラフルなエレクトロ・ポップが満開。和の音使いも独創的な、遊び心あふれる充実作。

    TOYOMU  TRCP-250 トラフィック ¥2,484(税込)

    ピアノ・トリオが紡ぎ出す、北欧モダンジャズの円熟品。
    『ジャスト・ジス』

    スウェーデンのジャズ界を牽引する叙情派ピアニスト率いる人気トリオの、3年ぶりとなるオリジナル・アルバム。流麗なピアノの調べに心が洗われる表題曲を皮切りに、ビル・エヴァンスに捧げた「ワルツ・フォー・ビル」、30年超ぶりの再演となる「ボーヒュースレン」など、美しくも清らかな13編の自作曲を収録。欧州最高峰のピアノ・トリオが紡ぎ出す、透明感のある北欧モダンジャズの円熟品。

    ラーシュ・ヤンソン・トリオ SOL SV-0041 スパイスオブライフ ¥2,592(税込)