Penが選んだ、2019年6月の注目カルチャー[MUSIC/音楽]

  • 文:山澤健治

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クリエイティブな感性を刺激する、本、映画、音楽を紹介する「Penが選んだ注目のカルチャー」。注目すべき作品を、毎月ご紹介します。



新録なのに漂うヴィンテージ感が、クセになる一枚。
『クロード・フォンテーヌ』

バッドバッドノットグッドらを擁するLAのレーベル「イノベイティヴ・レジャー」から、話題のシンガー・ソングライターがデビュー。ジェーン・バーキンを彷彿させる甘く儚いウィスパーボイスで歌うのは、レゲエやロック・ステディ、ボサノヴァ、MPB。それも伝説級のミュージシャンを従え、新録とは思えないほどのヴィンテージ・サウンドで繰り広げるので、そのミスマッチ感覚がクセになる。

クロード・フォンテーヌ PCD-24838 Pヴァイン ¥2,592(税込)

社会派ソウルと性愛ソウルをつないだ、幻のアルバム
『ユーアー・ザ・マン』

不朽の名盤『ホワッツ・ゴーイン・オン』に続き発売が予定されるもお蔵入りした、1972年の幻のアルバムがCD化。前作の成功でキャリアの絶頂を極めようとしていたソウルの巨人が、性愛ソウル路線へと舵を切る直前の貴重で洒脱なソウルが目白押し。サラーム・レミが新たにミキシングした音源や未発表クリスマス・シングルのロング・バージョンなどレアなトラックも追加。奇跡のような17曲。

マーヴィン・ゲイ UICY-15825 ユニバーサル ミュージック ¥2,700(税込)

壮大な音世界に野心みなぎる、人気グループの新境地。
『ジ・アニマル』

シーンの最前線を歩む6人組の第3弾フルアルバム。11分超の長尺曲「IndigoBlues」を筆頭に、ブルースを基調としたサイケデリックな音像とジャムバンド的な荒々しさが共存するサウンドメイキングで新境地を拓く。スムースでアーバンなイメージは後退したものの、ビートルズやピンク・フロイドにも通じるスケールの大きな音世界に野心がみなぎる。第2章の始まりを告げる、74分の痛快作。

サチモス KSCL-3152 F.C.L.S. ¥2,916(税込) 

どす黒さと甘さとで聴かせる、本物のディープ・ソウル
『イット・レインズ・ラブ』

ジェームス・ブラウンの伝記映画で歌の吹き替えを担当したベテラン・ソウルマンの2年半ぶりの新作。どす黒さと無骨な甘さとを併せもつJB直系の歌声で本物のディープ・ソウルを聴かせる。ヴィンテージな世界観で魅せるシンガーは多いが、この五十余年のキャリアを誇るソウル/ファンク界の生ける伝説は別格。古きよきソウル音楽の黄金律に則ったレトロモダンなサウンドも聴きどころ。

リー・フィールズ・アンド・ザ・エクスプレッションズ AMIP-0170 インパートメント ¥2,376(税込) 

インディ・ロック好きにも響く、メロウなUKラップ
『ノット・ウェイヴィング、バット・ドラウニング』

南ロンドン発、24歳の人気MCによるセカンド。母に宛てた手紙の体を取った曲を皮切りに、家族への愛、デリやシェフといった食を題材にしたリリックが異彩を放つ。ジャジーなトラックと内省的なラップは虚ろで甘やかな聴き心地。初期のジェイムス・ブレイクに通じるメロウさがあり、インディ・ロック好きにも支持されそう。トム・ミッシュ、サンファ、ジョルジャ・スミスら客演陣も豪華。

ロイル・カーナー HSU-10298 ホステス・エンタテインメント ¥2,592(税込)

先駆的インストバンドによる、15年ぶりの新作。
『mikazuki』

日本ポストロックの先駆的インストゥルメンタル・バンドがメンバーの脱退や交代を経て、15年ぶりとなる3作目をリリース。歌心に富み、メランコリックな感情を喚起する6人のリリカルな演奏力は健在。2本のギター、トランペットとソプラノ・サックスが有機的に絡み合いながら、優しく軽やかな詩情あふれるメロディを奏でる。アナログな温もりも音に刻む、情感豊かなインスト音楽集。

GROUP PCD-26072 Pヴァイン ¥2,808(税込)