Penが選んだ、2019年6月の注目カルチャー[CINEMA/映画]

  • 文:細谷美香

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クリエイティブな感性を刺激する、本、映画、音楽を紹介する「Penが選んだ注目のカルチャー」。注目すべき作品を、毎月ご紹介します。



高校生の決断をめぐる実話。
『僕たちは希望という名の列車に乗った』

1956年、東ドイツの高校生ふたりが西ベルリンの映画館で目にしたハンガリー民衆蜂起のニュース。彼らはクラスメイトに呼びかけて犠牲者への2分間の黙祷を行う。しかしこの行為が社会主義国家への反逆とみなされ、首謀者を密告せよと宣告される。決断を迫られ、友人や親への思いと信念の狭間で苦悩する若者たち。人としての正しい選択を模索する痛ましくもひたむきな青春が、現代を生きる我々に希望の道を示す。

監督/ラース・クラウメ 出演/レオナルド・シャイヒャー、トム・グラメンツほか 2018年 ドイツ映画1時間51分 5月17日よりBunkamuraル・シネマほかにて公開中。

© Studiocanal GmbH Julia Terjung

非日常を求めた若者たちの、無茶な強奪計画の行方は?
『アメリカン・アニマルズ』

大学の図書館に保管されている1,200万ドルもする稀覯本。ふたりの大学生がその特別な古書に目を付け、仲間とともに窃盗計画を実行に移す。ドキュメンタリー映画界から飛び出した気鋭の監督が、アメリカで起こった事件を映画化。実際の犯人たちへのインタビューとドラマを並走させる手法が、興奮を呼び覚ます。非日常を求めた不安定な若者たちの疾走感を描き出した、新しいスタイルのクライム・ムービーだ。

監督/バート・レイトン 出演/エバン・ピーターズ、バリー・コーガンほか 2018年 アメリカ映画 1時間56分 5月17日より新宿武蔵野館ほかにて公開中。

© AI Film LLC/Channel Four Television Corporation/American Animal Pictures Limited 2018

ホラーの名手が描き出す、戦慄のゴーストストーリー
『ラ・ヨローナ~泣く女~』

ソーシャルワーカーのアンナは、ある母親から子どもが危険な目に遭っているという相談を受けるが無視してしまう。その原因は泣き声を聞いた子どもを連れ去る、「ヨローナの呪い」だった。やがてヨローナはアンナの子どもに狙いを定める……。中南米の怪談をモチーフに、『死霊館』のジェームズ・ワン監督が製作。水のある場所に罠を仕掛けるゴーストを“ヒロイン”に、戦慄の描写が畳み掛けてくる本格派ホラーだ。

監督/マイケル・チャベス 出演/リンダ・カデリーニ、レイモンド・クルツ、ローマン・クリストウほか 2019年 アメリカ映画 1時間33分 全国の映画館にて公開中。

© 2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

予期せぬ旅がもたらす幸せ。
『クローゼットに閉じこめられた僕の奇想天外な旅』

母の死をきっかけに、会ったことのない父を探しにパリへと向かったインドの大道芸人、アジャ。泊まる場所のない彼が身を潜めた大型家具店のクローゼットが、なんとロンドンへと発送されてしまう。フランスの人気小説『IKEAのタンスに閉じこめられたサドゥーの奇想天外な旅』が原作。パリから最終的にリビアまで旅することになったインドの青年の恋と出会いを描く。幸福の意味を教えてくれる大人のファンタジーだ。

監督/ケン・スコット 出演/ダヌーシュ、ベレニス・ベジョほか 2018年フランス・アメリカ・ベルギー・シンガポール・インド合作映画1時間36分 6月7日より新宿ピカデリーほかにて公開。

©2018 Copyright BRIO FILMS-SCOPE PICTURES-LITTLR RED CAR-TF1 AUDIOVISUELS-SONY PICTURES ENTERTAINMENT FRANCE All rights reserved. Brio Films @Sébastien Bossi

家族の秘密と嘘とは?名匠が紡ぐサスペンス
『誰もがそれを知っている』

妹の結婚式に参列するために、スペインの田舎に帰省したラウラ。元恋人の幼なじみとも再会して、幸福な時間を過ごしていたが、パーティの最中に彼女の娘が姿を消してしまう。『別離』『セールスマン』で知られるイランの名監督、アスガー・ファルハディの下で、ペネロペ・クルス、ハビエル・バルデムが夫婦共演を果たした。小さなコミュニティの中でただならぬ緊張感が高まっていく、緻密な心理サスペンスだ。

監督/アスガー・ファルハディ 出演/ペネロペ・クルス、ハビエル・バルデムほか 2018年スペイン・フランス・イタリア映画 2時間13分 Bunkamura ル・シネマほかにて公開中。

© 2018 MEMENTO FILMS PRODUCTION-MORENA FILMS SL-LUCKY RED-FRANCE 3 CINÉMA-UNTITLED FILMS A.I.E.

少年の視点で描いた、過ぎゆく夏のスケッチ
『メモリーズ・オブ・サマー』

1970年代末、ポーランド。12歳のピョトレックは父が出稼ぎに出ている夏休みの間、母とふたりきりで過ごしていた。母が家を空けるようになるなか、都会からやってきた少女に惹かれるが……。ポーランドが生んだ若き才能が、ノスタルジックで透明感あふれる映像で描き出した寄る辺ない青春映画。大人と子どもの狭間で揺れ動く主人公の視点で夏の記憶が描かれ、瑞々しさとやるせなさが波のように押し寄せてくる。

監督/アダム・グジンスキ 出演/マックス・ヤスチシェンプスキ、ウルシュラ・グラボフスカほか 2016年 ポーランド映画 1時間23分 恵比寿ガーデンシネマほかにて公開中。

© 2016 Opus Film, Telewizja Polska S.A., Instytucja Filmowa SILESIA FILM, EC1 Łódz -Miasto Kultury w Łodzi