Penが選んだ、2019年4月の注目カルチャー[BOOK/本]

  • 文:今泉愛子

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クリエイティブを刺激する、本、映画、音楽を紹介する「Penが選んだ注目のカルチャー」。注目すべき作品を、毎月ご紹介します。



女性の生きづらさを描き、韓国で100万部超えのヒット
『82年生まれ、キム・ジヨン』

韓国で刊行され多くの女性の支持を獲得し、男性も巻き込む社会現象にまでなった100万部超えの大ヒット小説。日本では発売後4日で3刷となった。ひとりの平凡な女性、キム・ジヨンの人生を通して男性が優先される社会をさらけ出す。彼女は生まれた時から兄や弟が優遇され、学校でも会社でも結婚しても、それは続いた。夫は精一杯、彼女を理解しようと努めるが溝は埋まらない。疲弊する妻と困惑する夫の姿が印象的だ。

チョ・ナムジュ 著 斎藤真理子 訳 筑摩書房 ¥1,620(税込)

大企業もあっけなく騙された、土地詐欺の実態を暴く。
『地面師他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』

大手住宅メーカーが不動産取引で50億円以上の損害を被った事件は記憶に新しい。一流企業がなぜ騙されてしまったのか。そこには巧妙な仕組みがあった。「地面師」とは他人の土地を自分のものと偽って第三者に売り渡す詐欺師のこと。著者は、これまで日本で起きた地面師による詐欺事件を追う。なりすまし役のスカウト、透明のマニキュアで指紋を消すなど次々と明かされる手口に驚愕する。

森 功 著 講談社 ¥1,728(税込)

医師が効果的な入浴法を伝授、半身浴には健康効果がない!?
『最高の入浴法 お風呂研究20年、3万人を調査した医師が考案』

本書によると、世界でも毎日のように湯船につかる習慣をもつ国は日本だけ。温泉療法専門医である著者は、入浴の効果を医学的に解説し、より効き目がある入浴法を紹介する。血流を改善するだけでなく、水中では重力から解放され筋肉や関節を緩めることができること、半身浴には健康効果がないことなど、入浴に関する専門的な分析が参考になる。

早坂信哉 著 大和書房 ¥1,512(税込)

2万人超の現場の声をもとに、残業のリスクと原因を考察。
『残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか?』

そもそも残業はいけないことなのか。著者は個人と企業にとってのリスクを挙げ、残業の問題点を明かす。さらに2万人超のさまざまな立場のビジネスマンを調査したデータをもとに残業がなぜ起こるかを考察。現場の生の声を紹介しながら組織や職務分担の在り方、残業を求める企業風土や残業をやめられないビジネスマンの心理的葛藤に言及する。意識の改革こそがまず必要だとよくわかる。

中原 淳/パーソル総合研究所 著 光文社 ¥994(税込)