アフリカ系俳優演ずるヒーローが活躍した映画『ブラックパンサー』の全米興行収入が去る8月に歴代3位を記録し、新しい時代の夜明けを感じさせた今年のハリウッド。多様性が重要なキーワードとなっているいま、アジアカルチャーにも熱い視線が。それが『クレイジー・リッチ!』。アメリカで大ヒットし続編の製作も決定した話題作です。「ヒロインを白人にして映画化したい」というプロデューサーの提案を原作者が断ったというエピソードにも、時代の風を感じます。
主人公のレイチェルはアメリカ人で大学教授。恋人のニックに誘われ、彼の故郷のシンガポールを訪ねたところ、なんと彼はアジア屈指の不動産王の御曹司であると発覚! ニックの母親のエレノア(思わずひれ伏したくなるミシェル・ヨーの貫禄たるや!)や親戚から財産目当ての女だと疑われ、陰険な仕打ちを受けることになるのです。
まず目を奪われるのは、華僑の“クレイジー・リッチ”っぷりでしょう。ニックの友人が常軌を逸したドラ息子で、バチェラー・パーティでは海上に浮かぶタンカー(ヨットにあらず)の上でどんちゃん騒ぎ。急成長を遂げたアジアの桁違いのスケールを感じてしまいす。
けれども後半はぐっとストーリー性が際立ち、レイチェルとニックにエールを送りたくなる展開に。家族の伝統を重んじるエレノアにとって、レイチェルはふさわしい嫁ではありませんでした。貧富の差だけでなく、彼女はアメリカで育った移民の子どもだからです。レイチェルは中国語も話せるけれど、中身は白人だから文化が違いすぎるとエレノアは一歩も譲りません。アジア系スーパーセレブの現実がリアルに伝わってきます。
それと同時に、親子の惜しみない愛情や、自分なりに筋を通して戦うレイチェルの姿に、国境を超えて観る人の胸に響くはず。文化的背景もしっかり描かれた、男女ともに楽しめるロマコメです。
『クレイジーリッチ!』
監督:ジョン・M・チュウ
出演:コンスタンス・ウー、ヘンリー・ゴールディング、ミシェル・ヨーほか
2018年 アメリカ映画 2時間1分
9月28日より全国の映画館にて公開。