ビジュアルもサウンドも規格外! 長髪トリオのブラザーズバンド・Gliiico

  • 撮影:森健人
  • 文:佐野慎悟

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vol.04

ビジュアルもサウンドも規格外! 長髪トリオのブラザーズバンド・Gliiico

撮影:森健人 文:佐野慎悟

手前左が次男でボーカルのKai、右が三男でベースのKio、奥が長男でギターのNico。音が心地よく反響する銭湯にくれば、ついつい歌いたくなるのが世の常。

3月中旬に開催された「東コレ」こと「楽天ファッションウィーク東京2021年A/W」のキービジュアルに起用され、いま国内外のファッションシーンで話題となっている長髪3人組のロックバンドgliiico。日系カナダ人の3兄弟が東京で結成したこのバンドは、昨年の3月に1stシングル『Around』でデビューしたばかり。モデルで次男坊のKai(ボーカル)と三男坊のKio(ベース)は、2019年に活動の拠点を故郷のバンクーバーから東京に移し、その直後からファッション誌やファッションショーを中心に活躍。ロサンゼルスで音楽プロデューサーをしていた長男のNico(ギター)が、昨年に来日した際に3人で作成した楽曲が『Around』だ。その後約1年は、特におおやけにむけた活動のなかったGliiicoだが、Nicoも日本に移住した今年は、「東コレ」を皮切りに、本格的な活動がいよいよ開始されるようだ。

今後、日本のファッションシーンと音楽シーンを席巻する台風の目となりそうなGliiico3兄弟の素性を、昭和レトロな雰囲気漂う銭湯で洗いざらい聞き出してきた。

──Gliiicoというバンド名の由来は?

Kai:子どものころにバンクーバーで食べていた、グリコのカレーから名前を取りました。僕たちにとってのルーツであり、懐かしさの象徴。

3兄弟のムードメーカー的な存在で、Gliiicoのボーカルを務めるKai。「楽天ファッションウィーク東京2021年A/W」のキービジュアルには、Kaiのガールフレンドでモデルのアリア・ポーキーも出演。

端正な顔立ちから、モデルとしての活動の幅も広いKio。ファッション撮影ではKaiとふたりで起用されることも多い。

バンド活動のかたわら、音楽プロデューサーとしても活躍する長男のNico。モデルとして活躍する弟たちにも引けを取らない、オリジナリティあふれるファッションセンスをもつ。

──日本に拠点を移した経緯は?

Kai:3人とも別の思いがあると思うけど、僕は親からのサポートを受けずに、インディペンデントにいろんなことをやってみたかった。

Kio:新しい国、言葉、文化、食べ物……。新しいものを見たり聞いたりすることが、一番クリエイティブな刺激を与えてくれます。子どものころビデオや雑誌を通して間接的に触れた日本のカルチャーを、もっと深く吸収したくてKaiと日本に移住しました。

Nico:僕はバンクーバーで生まれて、仕事も北米をベースにしていたこともあり、日本のルーツをもっていながら日本に住んだことがないことに違和感を覚えていました。最初はKaiとKioのもとに数カ月だけ旅行できて、移住すべきかしないべきか考えた結果、この3人で活動したいと思って来日を決めました。

1年の充電期間に録りためた、新曲が続々とリリース予定。

母親の影響から、山下達郎やフィンガー5といった昭和のポップソングを聞いて育った3兄弟の音楽やファッションセンスには、どこかノスタルジックな雰囲気が漂う。

──先日(3月18日)ライブストリーミングに参加していましたが、新曲も披露していましたね。

Kai:「kidzfrmnowhere.(キッズフロムノーウェア)」というクリエイティブ集団が手がける新しいライブ配信イベント “kidzland(キッズランド)”の第一弾として、『Around』の他に『Bullet』と『Nonchalant』の新曲2曲を披露しました。4月にはファッション誌のイベントでリアルなライブを披露できる予定です。

Kio:三人で音楽をつくるだけでも十分に楽しいんだけど、せっかくバンドをやっているんだから、今年はもっとライブの機会を増やしていきたい。いまは時期的にもすごく難しいタイミングだけど、今年はGliiico Yearにしていく予定です。

Gliiicoのトレードマークともいえるのが、黒髪ストレートのロングヘアとレザーパンツ。全員揃えたユニフォーム的な出で立ちが、昭和レトロなフォークグループやグループサウンズを彷彿させる。

3人でジャレあうときは、いつもKaiが中心になって大騒ぎ。このときは2対1のプロレスデスマッチを3人で再現。正義のKioとNicoが力を合わせ、ヒールのKaiを討伐。

プロレスで汗をかいたあとは、仲直りして3人で入浴。頭の上にタオルを乗せる作法は心得ているようだが、入浴する前にまずサングラスは外すべきだろう。

──「楽天ファッションウィーク東京2021年A/W」のメイン会場となった渋谷ヒカリエは、まさにGliiico一色になっていましたね。

Kai:いまはファッション的なアプローチの露出が多いから、今年はもっと音楽シーンに深くアプローチしていきたいと思っています。もちろん、自分たちの巨大な写真がヒカリエの壁という壁に貼られている光景は最高にクールでしたよ。

Nico:最初の1曲をリリースしてから、1年間何も活動してなかったからね(笑)。3人が一緒にいる今年は活動の密度が明らかに濃くなるから、そこが去年との大きな違いになる。僕らはただの革パンを履いたロン毛3兄弟じゃないんだってことを、みんなに知ってもらわなきゃね(笑)。

Kai:そう。たくさんライブをやって、もっと日本のオーディエンスとしっかり繋がっていきたいよね。

無条件のサポートを与え続けてくれた、母への思いを胸に。

「まだまだ母親に自慢できるレベルまでは達していませんが、早く誇らしく思ってもらえるようなバンドになりたい」とKai。

──今後の活動における目標は?

Nico:僕は以前に北米の音楽業界で働いていたから、あっちのマーケットに直接アプローチしていく手段ももちろんあると思います。実際に北米のメジャーレーベルの人たちと話す機会もありますが、僕らはまず日本をベースにGliiicoのアイデンティティをしっかりと固めて、ここで成長してから、日本のバンドとして世界に発信していきたいんです。

Kai:3人が共通してもっている一番の目標は、母親に素敵な家をプレゼントすること。それは子どものころからまったく変わりません。だから僕らは、これからもその目標のためにベストな道を選んでいくつもりです。

お風呂上がりにそれぞれ牛乳、コーヒー牛乳、フルーツジュースを一気飲みする3兄弟。頭にタオルを巻いたブリーフ姿が、ここまでお洒落に決まるバンドはなかなかいない。

暖簾から顔を出し、お団子状に連なるGliiico3兄弟。コロナ禍が開けた音楽シーンで、彼らが思う存分に暴れ回っている姿が見られることを、いまから期待せざるをえない。

※取材協力:「大黒湯」 東京都渋谷区西原3-24-5 TEL:03-3485-1701

Gliiico (Nico / Kai / Kio de Torres)
スペイン系フィリピン人の父親と、日本人の母親をもつde Torres一家の3兄弟、Nico、Kai、Kioが2020年に結成したロックバンド。同年3月にデビューシングル『Around』をリリース。今年3月には1年間の沈黙を破り2ndシングル『Nonchalant』をリリースした。今年中にいくつかのシングルを追加リリースする他、EPやアルバムのリリースも予定している。