約3万冊の本の世界にどっぷりと! 本との出合いを楽しむスペース「文喫」が六本木に誕生。

  • 文:小川 彩

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「文喫」の店内。旧青山ブックセンターのスペースを活かしながら、リノベーションしました。

東京・六本木に、新しい形態の本屋「文喫」がオープンしました。場所は、惜しまれつつ2018年6月にクローズした青山ブックセンター六本木店跡地です。

「文喫」の最大の特徴は、入場料を払って入店すること。“どうしたらこれからの本屋が楽しい場所になるだろう?”   そんな問いに対して、スープストックを運営するスマイルズ、森岡書店、そしてブックセレクトブランドであるYOURS BOOK STOREのメンバーらが1年以上前にアイデアを出し合った際、「文化そのものを喫する時間を提供する」というコンセプトとともに「文喫」というネーミングが生まれたそう。町の本屋が消えていくことへの危機感とともに、人と書籍とをつなぎたいという思いをもっていたメンバーが六本木のこのスペースと出合い、文喫を誕生させたのです。一冊一冊の書籍との出合い方は人それぞれですが、文喫は、誰にも急かされることなく心ゆくまで本とのストーリーを紡ぐことを肯定する場所といえるでしょう。

グラフィックやインテリアデザインを担当したスマイルズのクリエイティブチームは、店内の導線だけでなく、古い壁や床、建具の一部を残して、旧店舗の文化の記憶を踏襲。サインやリーフレット、喫茶室のアイテム、そしてフロアなどにアイコニックに使われたピンク色は、本との出合いを初恋にたとえて「初恋ピンク」と名付けられました。プロデュースとブックディレクションはYOURS BOOK STOREが担当。今後、店舗を運営するリブロプラスのスタッフとともに、ゲストの要望や傾向に応じて書籍の顔ぶれをアップデートしていきます。

入場手続きに加え、書籍の購入やギフトラッピングを行う店の受付。ブックコンシェルジュの対応窓口でもあります。

レセプションの向かいは、セレクトした雑誌の表紙が壁面を彩ります。蓋を持ち上げると、それぞれのテーマにリンクした書籍が並びます。

では、実際に入場してみましょう。まずエントランスを入ってすぐのスペース「展示室」では、本にまつわる企画展が開催されています。2019年1月31日までは、フォトグラファー・泊昭雄がクリエイティブディレクターを務める雑誌『hinism(ヒニスム)』第10号がアクシスから復刊することを記念し、『雑誌の力』と題した第1回企画展を開催中。第10号の色校正刷と貴重なバックナンバー(数量限定)を閲覧できます。

展示室奥がレセプション。ここで入場料を支払い、入場バッジを受け取ったら、階段を上がって約3万冊の本の世界へ。ちなみに、1階までは入場無料です。2階正面は選書室。版型や出版社を問わず、テーマ別に本棚が編集されています。充実しているのはアートやデザイン、建築などのジャンルですが、ビジュアルブックに交じって古典や文学など人文系の良書がしっかりと並んでいるのもまた、文喫のこだわりなのです。

気になる書籍を手に取って、隣の喫茶室へ。オリジナルブレンドや煎茶が楽しめますが、すべてがお代わり自由。小腹が空いたら「牛ほほ肉のハヤシライス」「海老ドリア」「とろけるカスタードプリン」など、食事からデザートまで喫茶店の王道メニュー(税込¥580〜)をいただけます。デスクで静かに書籍を読みたい人のための「閲覧室」や、グループで利用できる「研究室」などもあります。ちなみに店内は完全禁煙。パソコンの作業ができるよう、喫茶室も閲覧室もコンセントやFree Wifiを完備するので、外で仕事したい人にも快適です。書籍と本屋を愛するチームが立ち上げた、新しい本屋のスタイルを体験してください。

展示室で開催中の『雑誌の力』展。2018年12月20日には、復刊する『hinism』第10号が店頭に並びます。hinismのいち読者でもあった森岡書店の森岡督行が企画。

選書室。ネットのアルゴリズムのリコメンドでは出合えない、プロによる書棚のセレクトに唸らされるはず。見過ごしていた良書との偶然の出合いを楽しみましょう。

喫茶室。壁面に飾られた2本のオールには、「本の海に漕ぎ出そう」というメッセージが込められています。

閲覧室。ワークチェアと、バンカーズデスクライトが備えられた落ち着いた雰囲気のデスクが12席あります。奥は研究室。

文喫
東京都港区六本木6-1-20 六本木電気ビル1F
TEL:03-6438-9120
営業時間:9時〜23時(カフェは22時30分L.O.) 
不定休
入場料:¥1,620(税込)
http://bunkitsu.jp