伝説のテニス選手の戦いに、思わず胸が熱くなる『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』

  • 文:細谷美香

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向かって左がジョン・マッケンロー、右がウィンブルドンで快進撃を続けるビヨン・ボルグ。本作の監督はカンヌ映画祭などで高い評価を得た『アルマジロ』を撮った、ヤヌス・メッツです。© AB Svensk Filmindustri 2017

テニスを題材にした実話ものといえば、1970年代を舞台にした『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』のヒットも記憶に新しいところですが、また強く推したいテニス映画が公開に。それが『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』。伝説をつくったふたりのテニス選手、ビヨン・ボルグとジョン・マッケンローのぶつかり合いを描いたアツいスポーツ映画です。

マスコミに追いかけられることにも神経をすり減らし、ウィンブルドン5連覇へのプレッシャーに押しつぶされそうになっているボルグ。テニス選手としての日々のルーティンは使うタオル一枚まで神経質に整えられ、頭の中は勝負のことで占められています。しかし冷静沈着な彼も、かつてはすぐに激昂していたテニス少年。映画ではコーチとの出会いによって、自己をコントロールする術をつかんだ過去が明かされます。一方、彼のライバルであるジョン・マッケンローは自分が納得いかない判定には食ってかかり、観衆のブーイングを受けながらときには暴言を吐くこともあった“悪童”。そんなマッケンローも、ただ父親に認められることを求める小さな男の子でした。

臨場感たっぷりに描かれる1980年のウィンブルドン決勝戦のシーンは、結果を知っていても手に汗握ってしまう瞬間の連続。ふたりが魂と肉体で対話を繰り広げるテニスコートは、過酷だけれど自由で、誰にも邪魔されないサンクチュアリのように見えてきます。表面的なキャラクターは“氷と火”とまさに正反対でありながら、家族も恋人も立ち入れない、最前線で命を削った者だけが分かち合える感情で結ばれているふたり。どんなフィクションも太刀打ちできないドラマティックな対決と和解に、胸が熱くなります。

ボルグを演じるのは『ストックホルムでワルツを』のスベリル・グドナソン。少年時代はボルグ本人の息子が演じました。© AB Svensk Filmindustri 2017

体重を落としてテニス選手としての肉体をつくり、マッケンローを演じたシャイア・ラブーフ。 © AB Svensk Filmindustri 2017

『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』

監督:ヤヌス・メッツ
出演:スベリル・グドナソン、シャイア・ラブーフほか 
2017年 スウェーデン、デンマーク、フィンランド合作映画 1時間48分
8月31日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて公開。
http://gaga.ne.jp/borg-mcenroe