Vol.48 東京アートブックフェアで話題を集めた、"...
写真・文:中島佑介(POST)

Vol.48 東京アートブックフェアで話題を集めた、"伝説のジン"の復刻版。

“100 PAGES / 5 ZINES” / Kazunari Hattori, Takashi Homma, Tomoo Gokita, Daifu Motoyuki, Ai Tsuchikawa & Ryohei Kobayashi / TOKYO ART BOOK FAIR
『100ページズ/5ジンズ』 / 服部一成、ホンマタカシ、五木田智央、題府基之、土川藍&小林亮平 / 東京アートブックフェア刊

リソグラフという印刷機があります。理想科学工業が発売しているデジタル印刷機で、一度に2色の印刷が可能、サイズも小さく、コピー機のような感覚で簡単に操作できるのが特徴です。印刷コストも安く、数十部〜数百部といった少部数の印刷に適しているため、自費出版で活用されるケースも増えています。リソグラフ自体は1970年代から販売されていますが、この数年でアートブックに利用されるケースが顕著に増加しました。特に韓国や中国、台湾などのアジア各国ではリソグラフでの出版がブームで、各国で開催されるアートブックフェアではそういった出版物をよく目にします。

東京アートブックフェアも、ブックフェアが始まった2009年にリソグラフを使ったジン『100 Pages/ 5 ZINES』を出版しました。服部一成、ホンマタカシ、五木田智央、題府基之、土川藍&小林亮平の5組のクリエイターに20ページのジンを制作をしてもらい、5冊セットとしたアートブックです。いま改めて見ると、国際的に活躍の場を広げていくクリエイター陣が一堂に会していた、貴重な出版物であったことがわかります。東京アートブックフェア開催10回目となった今年、『100 Pages』を500部限定で復刻しました。

リソグラフは、再現性の高い印刷方法ではありません。滲みやカスレが生じることもあり、色も忠実に再現するには向きません。また、3色以上を重ねる際には印刷機を2回通す必要がありますが、この時に版がズレるエラーも起こります。しかし印刷の工程で作家がコントロールできないエラーが生じること、これがリソグラフでアートブックを制作する魅力のひとつになっており、今日ではさまざまなアクシデントをあえて取り入れた作品が世界中で制作されているのです。

リソグラフを活用したアートブックやジンが増えている状況は、印刷物がオリジナルの複製ではなく、それ自体が表現である認識が定着しつつあることを示しています。10年前に出版された『100 Pages』はリソグラフを使った出版の先駆け的な存在でもあり、振り返ってみると表現として豊かになっていくアートブックの現在を予兆する存在だったのかもしれません。

服部一成、ホンマタカシ、五木田智央、題府基之、土川藍&小林亮平の5組のクリエイターが単色、または2色印刷で20ページのジンを作成。5冊がセットになっています。

ホンマタカシによる「R 1994 – 2009」は、作品にもたびたび登場する愛犬ホイスのフォトダイアリー。青と黒を掛け合わせた図版自体が、このジン特有の表現になっています。

左上から時計回りに、題府基之「Family」、服部一成「CAT AT NIGHT」、土川藍&小林亮平「My First Nature Book」、五木田智央「Ballet」。

“100 PAGES / 5 ZINES” / Kazunari Hattori, Takashi Homma, Tomoo Gokita, Daifu Motoyuki, Ai Tsuchikawa & Ryohei Kobayashi / TOKYO ART BOOK FAIR
『100ページズ/5ジンズ』 / 服部一成、ホンマタカシ、五木田智央、題府基之、土川藍&小林亮平 / 東京アートブックフェア刊
タイトル:『100ページズ/5ジンズ』
制作:服部一成、ホンマタカシ、五木田智央、題府基之、土川藍&小林亮平
出版社:東京アートブックフェア
ページ数:100ページ
サイズ:20.5×14.5 cm
出版年:2019年
価格:¥3,240(税込)

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