Vol.13 すぐれた古書との運命的な出合いは、まず出...
写真・文:中島佑介

定期的にひとつの海外の出版社に焦点を当て、その出版社の本だけを取り扱うという独自の選書を展開しているショップ「POST」。これまで何百冊、何千冊ものアートブックを見ている中島佑介さんが、魅力的な古書と出合うための秘訣と、その神髄に至るきっかけとなったアメリカの出版社について語ってくれました。

Vol.13 すぐれた古書との運命的な出合いは、まず出版社をチェックすることで効率的に手繰り寄せられる。

MORRIS LOUIS / Morris Louis / ABRAMS
モーリス ルイス / モーリス・ルイス / エイブラムス

POSTでは毎回、各出版社単位で本を紹介していますが、そのアイデアを思いついたのはPOSTの前身だった「リムアート」での買い付けの経験からでした。リムアートでは古書を中心に取り扱い、「いま見ても新鮮な発見がある本」「アーティストが有名・無名という既存の評価ではなく、本自体が魅力的なもの」というのを選書の方針にしていました。ですが、買い付けの当初は古書に関する知識が少ないので、背表紙を見ただけではどんな本なのかわかりません。そのため、買い付け先では本棚を片っぱしから、1冊ずつすべて目を通していくことになります。朝から夜までずっと本棚に向かい続けても収穫がほとんどない……といった辛いこともよくありましたが、苦行のような買い付けを続けるうちに、本を選ぶ際の基準になりそうなものに気がつきました。「何年代のこの出版社の本はよいものが多い」という、各出版社の時代による傾向です。実際、この発見は本を選ぶ基準として大いに役立ち、よいアートブックを見つけると、必ず出版社をチェックするようになりました。この体験が元となって出版社に焦点を当てるPOSTのスタイルが生まれたのですが、自分にとっての大きな発見を促してくれた出版社のひとつが、アメリカのABRAMS(エイブラムス)です。

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