女優・夏帆、27歳の等身大が切り取られた映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』が公開。

  • 文:Pen編集部

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撮影はわずか12日間という短さ。しかし、スタッフやキャストのおかげで安心して演技できたと語る。©2019「ブルーアワーにぶっ飛ばす」製作委員会

2007年に初主演映画『天然コケッコー』で日本アカデミー賞新人賞などを受賞し、以降も映画『海街diary』やドラマなど良作に多数出演している女優、夏帆。来年には『Red』や『劇場版 架空OL日記』の公開も控え、いま最も注目されている女優のひとりだ。そんな彼女が主演の映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』が公開中。いままでとは違った彼女の一面に引き込まれる作品に仕上がっている。

夏帆が演じる主人公・砂田夕佳は、東京でCMディレクターとして日々仕事に明け暮れている。一見器用に仕事をこなしているように見えるが、口を開けば悪態ばかりのアラサーだ。そんな砂田はある日、“秘密の友達”である清浦あさ美と、祖母の見舞いのために故郷の茨木に帰ることに。愚痴っぽい母親や骨董マニアな父親、引きこもりがちな兄など、キャラの濃い家族の前ではいつもの毒舌は通用しない。大嫌いな田舎で、本当の自分と向き合うことになる……。

夏帆は脚本を読んだときに、「一番やりたかった役に巡り会えた」と感じたと言う。周りの人には絶対に言わない、いつしか心にぽっかりと空いてしまった喪失感、老いた家族との再会で感じた時の流れなど、砂田の繊細な心の機微に共感したからだ。映画は、とにかく田んぼが続くだけ、夜飲めるところといえばスナックしかないなんていう“田舎あるある”も描かれている。シム・ウンギョン演じる清浦は、そんなつまらない田舎でもとにかくハイテンション。ちょっと他の登場人物とズレた彼女の存在によって、東京での日常に埋もれていた砂田の深い部分が露わにされていくのだ。

脚本は今回が初監督である箱田優子が自ら手がけており、箱田自身も砂田は「限りなく私に近いキャラクター」だと言う。砂田はある意味、箱田監督と夏帆が混じり合って生まれた。夏帆は「砂田は箱田監督でもあり、フィクションでもあり、私でもある。綺麗な部分だけでなく不器用な部分も含めて、撮影時の27歳だった私が切り取られている」と言う。女優としてキャリアを重ねた彼女が、自身を振り返る作品にもなった『ブルーアワーにぶっ飛ばす』。彼女の今後の活躍が楽しみになる作品だ。

砂田の親友、清浦を演じたのは映画『新聞記者』でも注目を浴びている、韓国・ソウル出身のシム・ウンギョンだ。©2019「ブルーアワーにぶっ飛ばす」製作委員会

箱田監督は『TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2016』で審査員特別賞を受賞し、本作の映画化が決まった。Ⓒ2019「ブルーアワーにぶっ飛ばす」製作委員会


『ブルーアワーにぶっ飛ばす』

監督/箱田優子
出演/夏帆、シム・ウンギョンほか
2019年 日本映画 1時間32分 
テアトル新宿ほかにて公開中。
http://blue-hour.jp