映画『バルフィ! 人生に唄えば』で、2時間半どっぷりインドのファンタジーに浸かろう。

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    インド映画と言えば、『ムトゥ 踊るマハラジャ』や『ロボット』など、強烈でしつこいノリとダンスに逆にハマッてしまう、という印象なのではないでしょうか? ところが、本作『バルフィ! 人生に唄えば』では、そのギラギラした感覚は、優しいファンタジーに取って代わっていて、2時間半どっぷりと「マサラファンタジー」に浸らせてくれるのです。
    主人公のバルフィは貧しい家に耳も口も不自由な赤ん坊として産まれます。なので、長い映画の中で、彼は発する言葉は、自分の名前『バルフィ』(と聞こえる音)のみ。会話の変わりに彼が交わすのは、感情表現と目の動きです。まるでサイレント映画のようなコミカルな身振りと、喜び、悲しみ、怒り、さまざまな感情を瞳で訴えかけるバルフィの姿は、逆に彼のキャラクターの本質をスクリーンに映し出します。
    さて、物語は、彼が超美女!な女性シュルティと出会い、恋に落ちることから始まります。聞くことも話すこともできない彼は、優しさと陽気さと辛抱強さをもって、彼女のハートを振り向かせようと全力を振り絞ります。ハンサムでお金持ちの婚約者のいる彼女の心は、次第にバルフィの存在が気になってゆくのですが、さまざまな障害が立ちはだかり、当然ながらうまくいきません。その先に彼を待っていたのは、予想外の新しい恋と大事件でした――。
    本作は『雨に唄えば』『きみに読む物語』『アメリ』『Mrビーン』などさまざまな映画へのオマージュに溢れています。映画ファンの一部には、それを「真似だ」「パクリだ」と揶揄する人もいるかもしれませんが、映画に憧れ、映画を愛したつくり手たちの「感動のコラージュ」だと思うと、なかなかに感慨深いものがあります。インド映画ならではの長尺の途中には、きちんと「Intermission」(トイレ休憩)がはさまっていますので、たっぷり時間を取ってくつろいで、バルフィが言葉ではなく、生き方で教えてくれた大切なメッセージを、しっかり受け取ってください。(Pen編集部)

    2013年インド版アカデミー賞と言われる「フィルム・フェア」で作品賞、主演男優賞ほか4部門を受賞。アカデミー賞では、外国語映画賞 インド代表作品に選出。

    『バルフィ! 人生に唄えば』

    監督:アヌラーグ・バス
    出演:ランビール・カブール、プリヤンカー・チョープラー、イリヤーナー・デクルーズ
    2012年 インド映画 2時間31分
    配給:ファントム・フィルム
    8月22日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国順次ロードショー
    barfi-movie.com