「働き方改革」はまず身の回りから! 読めばやる気も向上する、仕事の悩みQ&A

  • 文:石崎貴比古
  • イラスト:岡田丈

Share:

働き方改革が叫ばれるいま、各人が「どう働くか?」を問う時代になりました。自分らしさを生かすワークスタイルを探るためにも、できるだけベストな状態で仕事に取り組みたいものです。人間関係やリラックス方法など、前向きに仕事に取り組むための日々のヒントを、精神科医で医学博士の西多昌規さんに教えていただきました。


西多昌規(精神科医・医学博士)
●1970年石川県生まれ。精神科医、医学博士。早稲田大学スポーツ科学学術院准教授。専門は睡眠、身体運動、メンタルヘルス。著書に『「テンパらない」技術』(PHP研究所)、『休む技術』(大和書房)など多数。



パート1 DAILY編 脳が“元気になる”働き方を習慣化して、よりよい仕事を。
朝から続く長い会議や散らかり放題のデスク。忙しい日常こそ、メンタルケアが重要です。大切なのは脳が元気な状態をつくること。ときには自分の習慣を見つめ直すことで、よりよい仕事ができるはず。


Q. 深夜のほうが仕事が捗るのですが、朝型に変えるべきですか?

A. 朝型、夜型というものは生物学的に規定されているので、自分で変えようと思っても変えられるものではありません。むしろ年齢によって変わっていくのが一般的で、男性の場合は若ければ若いほど夜型、老いるほど朝型になる傾向があります。眠いと感じる時間には論理的思考を司る前頭葉の働きが通常より悪くなっているので、頑張っても脳に定着しません。つまり、自分の思考のパフォーマンスが上がる時間帯を見極めるべきなのです。

Q. 実りある会議にするには、どれくらいの時間で終わらせるべきですか?

A. 重要なのは、集中力の持続です。作業内容によって差がありますが、人間の集中できる時間には限度があります。会議をする場合は、90分が限界でしょう。検討すべき議題が少ないようであれば、90分の半分の45分が好ましい。多くても90分、さらに多く見積もっても120分で終わるぐらいの議題設定・進行が望ましいです。それ以上の会議は集中できる人が少ないですから、時間が無駄になります。

Q. やっぱり机の上はきれいにしたほうがいいのでしょうか?

A. もちろんです。注意欠如傾向の人は得てしてデスクの上が散らかっていて、そのために忘れ物や失くし物が多い。なにかを探すための時間がタイムロスを生むわけで、それが仕事の効率低下を招いています。逆に机が散らかっていても探し物がすぐに見つかる人もまれにいますが、これは例外的なケースですから言い訳にしないように。デスク上のモノの配置にベストポジションはありませんが、ラップトップを見下ろす姿勢はストレートネックにつながるので、ストレッチをするなどして身体に負荷がかかりすぎないようにしましょう。



Q. 打ち合わせを1日でいくつもこなすには、どんなやり方がよいですか?

A. 間に別の仕事を挟んだ方がいいでしょう。似たような内容の打ち合わせが重なると、記憶の干渉が起こり、どれがどの議題だったか曖昧になってしまいます。性格の異なる作業を挟むか、打ち合わせの後に、その内容を整理するための時間を取ったほうが、脳やメンタルにとって好ましいと言えます。また、複数のことを同時にこなすには、段取りをつける脳の「ワーキングメモリ」が重要になります。日頃の「睡眠負債」がある場合は悪影響になってきますから気をつけましょう。




パート2 COMMUNICATION編 仕事上のコミュニケーションは、「共存力」を高めて快適に!

仕事の多くは社内・社外問わず複数名で取り組むもの。とはいえ他人とのコミュニケーションはストレスになることもあります。異なる世代、異なる価値観の人との共存を図って、快適に働きましょう。



Q. 部下との飲みュニケーションって、やっぱり控えるべきですか?
A. あまりに頻繁な開催はNGですが、たまの飲み会は若い人も望んでいることが少なくありません。お互いに尋ねるタイミングを逸したことを口にしてみたり、あるいは仕事とまったく関係ない趣味の話題で盛り上がるのも大切。オフィスだけでの付き合いよりも、距離感が近くなるのは確かです。最近は働き方改革の流れもあるので、「スタート時刻は早め、二次会なしに帰宅」という、いまの時流に合わせたスタイルで企画してみましょう。

Q. 職場で世代間ギャップを強く感じます。どう解決すればいいですか?
A. 異なる世代の意見に無理に迎合したりせず、彼らの価値観をありのままに受け入れる姿勢が大切です。逆に自分の考え方も強制しないこと。それは自分の世代にしか通用しない思考かもしれないからです。自分の世代的ポジションがチーム内で高齢に位置していて、後輩に世代間ギャップを感じるならば、「脳が若い刺激をもらっている」と違和感をポジティブに捉えてみるといいでしょう。これも学びのひとつです。


Q. 無茶ぶり仕事の上手な断り方を教えてください。
A. 断ることは仕事上の重要なスキルです。仕事の段取りは、場数によって鍛えられるもの。不可能な仕事は諦めたり、誰かに任せることで順応していきます。断り方として、「やりたい気持ちはあるが、いまは手いっぱいでできない」「部分的にここだけならば可能」などと相手に伝えることが重要です。丸投げするようであまりいい手段ではないですが、他の適任者を推薦する手もあり。自分に依頼すると多大な不利益が生じることを匂わせる方法もありますが、評価が下がるリスクは否めません。


Q. 後輩を教育する際、どんなことを心がければよいですか?
A. 一般的に言って最近の若手社員は、上司からの叱責に弱いような印象があります。まずは若手のよいところを見つけて、そこを評価してあげましょう。しかし、ただ褒めてばかりでは彼らは「勘違い」してしまいます。そこで単なるダメ出しをするのではなく、「ここを直せばもっとよくなる」というような注意をするといいでしょう。教育する上司の側にも、有能な後輩が育っていくことは自分の仕事にとってもプラスになることは間違いないのですから。





パート3 RELAX編 仕事のパフォーマンスUPのために、効果的なリラックスタイムとは?

リラックスできる環境は、自分自身でつくるものだ。緊張や疲労が慢性化しては、仕事のパフォーマンスは向上しない。睡眠の取り方や緊張感への対処も、ビジネススキルなのだ。


Q. 寝る直前までメールをチェックしてしまいます。どうすればやめられますか?
A. 時間帯に限らず、Eメールを自発的に見ないようにするのは難しいですよね。逆に翌日の職務に影響しなければ、特に問題はないとも言えます。気にしすぎてしまう傾向に自覚があるならば、制限する方法もあります。自動着信をオフにしたり、機内モードに設定したり……。思い切って電源を切ってしまうのも、次の立ち上がりが遅いのでしばらく使わなくなりますから、自戒のためにはいい方法でしょう。

Q. 15分の昼寝は、本当に仕事の効率を上げるのですか?
A. 上がります。朝から午後までに蓄積した疲労物質が軽減され、作業効率がよくなるのです。昼寝の仕方に特に決まりはありません。短時間ならばオフィスで机に突っ伏してもいいですが、長時間となると脳がうっ血して苦しくなる。本格的に横になると長時間眠ってしまって寝起きが悪くなります。椅子やソファでゆったり座って昼寝をするのが望ましいでしょう。もちろん、職場や上司が許せばの話ですが……。


Q. 週明けの月曜日、憂鬱な気持ちを軽くする方法ってありますか
A. 人間というものは変化を嫌いますから、週末を過ごすと身体が休みに慣れてしまいます。長期休暇の前後はもっと苦しいでしょう。月曜日は週の始まりですから憂鬱な気持ちも無理はありません。実際、統計的に見て月曜日の自殺率というのは非常に高いのです。だるさを無理に切り替えるのは難しいですから、対処方法としては重要な仕事は入れないことです。あくまで週をスタートする調整日として捉えれば、プレッシャーも少なく火曜日からフル稼働できるのではないでしょうか。


Q. 大事なプレゼン前など、緊張をほぐすコツを教えてください。
A. 緊張とは、一種の恐怖反応。場数を踏んだり、年齢を経ることで和らぎます。プレゼン時は視線が大切です。どこに注意を向ければいいかわからない場合は、頷いてくれる“味方”に語り掛けましょう。「相手をジャガイモと思え」などという古典的方法は、少々非現実的です。息を吸い、ゆっくり吐くようにして10秒かけて深呼吸するなど、交感神経系から副交感神経系を優位に働かせるのです。一方、緊張と集中は紙一重の精神状態ですから、適度な緊張は必要。集中できない時には緊張もしないものなのです。




以上の記事は、Pen10/1号「自分らしさを生かす、新しい働き方。」特集からの抜粋です。
アマゾンで購入はこちらから → http://amzn.asia/d/iwv33YQ