NetflixやAmazonでいますぐ鑑賞できる、今年のアカデミー賞候補作品5選。

  • 文:細谷美香

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Netlflixで配信中の『シカゴ7裁判』は、作品賞をはじめ6部問にノミネートされている。NICO TAVERNISE/NETFLIX © 2020

日本時間の4月26日(月)に発表となる第93回アカデミー賞。Netflixのオリジナル映画『Mank/マンク』が最多の10部門にノミネートされたことで話題となったが、その他にもNetflix(ネットフリックス)やAmazon Prime Video(アマゾンプライムビデオ)で配信中の作品が多数ノミネートされている。作品賞をはじめ、各部門の注目作をピックアップして紹介したい。


『シカゴ7裁判』(Netflix)

1968年、シカゴで開かれた民主党全国大会。ベトナム戦争に反対する若者たちが集ってデモを行い、多数の負傷者が出る惨事となった。数ヶ月後、首謀者とされた7人が暴動を煽った罪で起訴されてしまう。『ソーシャル・ネットワーク』でアカデミー賞脚色賞を受賞しているアーロン・ソーキンが脚本、監督を手がけた史実をもとにした作品。

ソーキンの持ち味である怒涛の会話劇が裁判劇で切れ味を増し、ときに衝突しながらも信念を貫く男たちのドラマをエモーショナルなものにしている。作品賞、脚本賞などの他、サシャ・バロン・コーエンが助演男優賞候補に。演技派俳優たちの競演が、権力の暴走や差別など現代と地続きの問題を観る者に投げかける。



『シカゴ7裁判』
監督/アーロン・ソーキン
出演/サシャ・バロン・コーエン、エディ・レッドメインほか 
2020年 アメリカ映画 2時間10分 Netflixで配信中。
https://www.netflix.com/jp/title/81043755


『マ・レイニーのブラックボトム』(Netflix)

1984年にブロードウェイで初演された、黒人作家、オーガスト・ウィルソンの戯曲を映画化。“ブルースの母”と呼ばれたマ・レイニーを主人公に、人種差別の現実を重層的に描く。野心家のトランペッターを演じるのは、43歳の若さでこの世を去ったチャドウィック・ボーズマン。心に消えない傷を抱えた男の強さと弱さを体現して主演男優賞の最有力候補となっている他、ヴィオラ・デイヴィスも主演女優賞にノミネートされている。

Netflixではプロデューサーのデンゼル・ワシントンをはじめ、関係者がこの作品への思い入れを語る『マ・レイニーのブラックボトムが映画になるまで』も配信中。ブラック・ライブズ・マターの精神を伝える、いま観るべき1本だ。



『マ・レイニーのブラックボトム』
監督/ジョージ・C・ウルフ
出演/ヴィオラ・デイヴィス、チャドウィック・ボーズマンほか 
2020年 アメリカ映画 1時間34分 Netflixで配信中。
https://www.netflix.com/jp/title/81100780


『あの夜、マイアミで』(Amazon Prime Video)

のちにモハメド・アリと改名したボクサー、カシアス・クレイが、世界チャンピオンになった1964年の“あの夜”。彼のそばには、黒人解放指導者のマルコムXとミュージシャンのサム・クック、アメフト選手のジム・ブラウンがいたーー。原作は彼らがマイアミのホテルに集っていたという実話からインスパイアされて生まれた戯曲。

『ビール・ストリートの恋人たち』の母親役が忘れがたいレジーナ・キングが、監督デビューを果たした。サム・クックを演じた、トニー賞の受賞歴もあるレスリー・オドム・Jr.が助演男優賞候補に。時代のうねりの中で立ち上がって戦おうとする男たちのドラマが、焦燥感と臨場感とともに伝わってくる。



『あの夜、マイアミで』
監督/レジーナ・キング
出演/キングズリー・ベン=アディル、イーライ・ゴリーほか 
2021年 アメリカ映画 1時間54分 Amazon Prime Videoで配信中。
https://amzn.to/3x24N8Y


『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』(Amazon Prime Video)

2006年のヒット作『ボラット 栄光なる国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』の続編。カザフスタンのジャーナリスト、ボラットが娘とともにアメリカで様々な騒動を巻き起こす。前作に続いてボラットを演じるのはもちろん、『シカゴ7裁判』では助演男優賞候補になっているサシャ・バロン・コーエン。

トランプ政権から人種差別、コロナまであらゆるタブーに土足で踏み込み、不謹慎なギャグで顕在化していくボラットの方法論と精神は健在だ。助演女優賞では『ミナリ』のユン・ヨジョンが最有力と言われているが、本作で思い切り弾けた芝居を見せるブルガリア出身の若手女優、マリマリア・バカローヴァにもぜひ注目を。



『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』
監督/ジェイソン・ウォリナー
出演/    サシャ・バロン・コーエン、マリア・バカローヴァほか 
2021年 アメリカ映画 1時間36分 Amazon Prime Videoで配信中。
https://amzn.to/3tqDzqa


『タイム』(Amazon Prime Video)

90年代に銀行強盗で逮捕され、懲役60年というあまりにも重すぎる判決を下されたロバート。妻のフォックスは、子供たちを育てながら不当な判決に声をあげて戦い続ける。オバマ元アメリカ大統領夫妻が製作総指揮を務めた『ハンディキャップ・キャンプ:障がい者運動の夜明け』などともに、長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた注目作。

サンダンス映画祭など数々の映画賞でも話題を集め、司法の場での黒人差別の実態を世界に伝える作品だ。時の流れを感じさせるのは、20年にわたって撮影されたホームビデオの映像。過去から現在まで、困難な状況下でも決して揺らぐことのない愛の物語としての見応えもある。



『タイム』
監督/ギャレット・ブラッドリー
出演/フォックス・リッチ、ロブ・G・リッチほか 
2020年 アメリカ映画 1時間21分 Amazon Prime Videoで配信中。
https://amzn.to/3wUm2Jj