世界トップ3に君臨する大富豪から見える、経営者たちの新たな傾向

  • 文:冷泉彰彦
  • イラスト:岡田成生

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かつてアメリカの億万長者といえば、ロックフェラー、カーネギー、ヴァンダービルトなど、巨大財閥を築きあげ、第一線からの引退後、悠々自適の生活を送りながら篤志家として社会貢献を行うというイメージがあった。3名とも自分の名前を冠した大学を設立し、その他に財団や音楽ホールを残した。

現在の長者番付を見ると、トップ3を誇るアメリカ人の中で、こうした伝統に従っているのはビル・ゲイツだけだ。彼はマイクロソフトの経営から引退後、財団を本拠として地球規模で社会貢献を行う。

イーロン・マスク
●1971年、南アフリカ生まれ。スペースX創業者、テスラ・モーターズCEO。カナダを経てアメリカに移住。スタンフォード大学大学院を中退後、ソフトウェア企業を創業。2002年、スペースX創業。08年、テスラCEOに就任。

ジェフ・ベゾス
●1964年、ニューメキシコ州生まれ。アマゾン創業者。86年にプリンストン大学を卒業後、金融、銀行、ヘッジファンドで活躍。94年、自宅のガレージでオンライン書店アマゾンを創業した。

ビル・ゲイツ
●1955年、ワシントン州生まれ。マイクロソフト創業者。ハーバード大学在学中に起業、77年にマイクロソフトの経営をスタート。2008年に第一線から退き、以降は自身の財団を中心に活動する。

一方、1位のイーロン・マスクと2位のジェフ・ベゾスはまったく違う。彼らの企業は超巨大企業だが、未だに成長途上であり、創業経営者であるふたりは自社経営で頭がいっぱいという状況だ。

マスクの場合は、テスラ株が人気化しているが、彼の提案する完全自動運転はまったく未完成の技術だし、宇宙開発企業「スペースX」も成熟にはほど遠い。ベゾスの場合は、Eコマースが巨大化する中で公正取引という面でも、労働環境という面でも社会的批判を浴びている。その一方でクラウドサービスを収益の柱に据え、走り続ける宿命にある。

テスラもアマゾンも、業態も規模も変化の途上、つまりは巨大ベンチャーであり、その創業者が現役のまま長者番付のトップ2を占めるということは、変革スピードの速い現代を象徴していると言える。


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