絶滅から動物を守る壮大なプロジェクト『PHOTO ARK 動物の箱舟』が、一冊の本になりました。

  • 文:須賀美季

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随所に撮影背景や動物保護の記録が添えられた、オールカラーの圧巻の一冊。

自然、環境、地理など、地球上でおこるドラマティックな現象を美しい写真とともに伝える、唯一無二の雑誌『ナショナル ジオグラフィック』。本書は、同誌で活躍する写真家、ジョエル・サートレイが人生をかけて撮影を続けている、絶滅から動物を守るプロジェクトをまとめた圧巻の400ページだ。

吸い込まれるようなゴリラの瞳、柔らかなネズミの毛並み、フクロウの鋭い眼光に、ヌメッと艶めくカバの肌。ヤマアラシの固い毛の一本一本も、超リアルに見せてくれる。小動物の肌を打つ鼓動や、肉食獣たちの湿った息づかいまでも、手に取るように伝わってくるのだ。すべての動物たちが、モノトーンで統一された背景でスタジオ撮影されており、小さなネズミもまるでホッキョクグマのように優雅で堂々としている。命を浮き彫りにするような撮影方法こそが、この一冊を特別なものにしている。すべての動物が、いま我々とともに生きている命。そして、もう少しで無くなろうとしている種なのだ。

妻の病をきっかけに「死について」考えたという写真家が、放っておけばもう会えなくなってしまう絶滅の危機に瀕した動物たちを記録し、動物たちの救いの輪を広げる取り組み「PHOTO ARK」を発足させた。それはまさに、動物たちの種の保存であり、同じ地球に生きる大小さまざま命を守る箱舟のようだ。このプロジェクトは多くの著名人を巻き込み、現在も進行中で、本書で紹介されている約400種の他、ジョエルは25年をかけて世界の動物園にいる1万2000種すべての動物の撮影を続けるという。

さまざまな自然現象による動物たちの大量絶滅は、歴史上過去にもあったが、現在の絶滅のほとんどは人間が引き起こした人災だという。この勢いで絶滅が進めば2100年には、地球の全生物の半数が絶滅する可能性がある。「存在すら知らない相手を守ることはできない」と、ジョエルは語る。美しい動物写真の数々は、我々人間に向けた動物たちの声なき声であり、我々を生かしてくれる自然について考えるキッカケだ。後世に残すべき命の写真集を、ぜひ目の当たりにしてほしい。プロジェクトの全貌は、特設サイトにて公開中だ。

動物と向かい合った写真家のコメントも印象的。スマトラオラウータン(左)と、メキシコオオカミ(左)。

鳥や水中生物も、美しい姿を見せる。オウギバト(左)、タコクラゲ(右)。

レンズを覗き込む2匹。カラカル(左)と、シルバーマーモット(右)。

『PHOTO ARK 動物の箱船』

写真・著:ジョエル・サートレイ/関谷冬華 訳
発行:日経ナショナル ジオグラフィック社
価格:¥3,888
体裁:A4変型、ソフトカバー、オールカラー、400ページ
※初回分につき、全5種類の特製バッジ付。
※本の売り上げ1冊につき50円が「フォト・アーク」プロロジェクトに寄付される。

特設サイト
http://nationalgeographic.jp/photoark/