日本書紀成立1300年を寿ぐ特別展、『出雲と大和』が伝える古代日本と神話の力。

  • 写真・文:中島良平

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古代には48メートルの高さを誇ったと言われる出雲大社。鎌倉時代に本殿を支えていた巨大の杉の柱「心御柱(しんのみはしら)」「宇豆柱(うづばしら)」が、史上初めて揃って公開される。

養老4(西暦720)年に日本が国家として正式にまとめた最古の歴史書『日本書紀』。その成立1300年を記念する特別展『出雲と大和』が、東京国立博物館 平成館でスタートした。

天武天皇の命で30巻からなる『日本書紀』が編纂された目的は、天皇家の歴史的正当性を明確化し、天皇を中心とする律令国家として国をまとめ上げること。冒頭に記された国譲り神話には、出雲大社の祭神であるオオクニヌシは神々や祭祀の世界を司る「幽」であり、神武天皇が都を定めた大和の地で政治を行う天皇は、現実世界を司る「顕」であると記されている。

この『日本書紀』には出雲が多くの神話の舞台として登場するわけだが、一帯は遺跡などの考古学的資料に乏しいため、その描写の数々はヤマト王権が「支配を合理化するためにつくりだした歴史的な所産」だと考えられてきた。しかし1980年代以降、荒神谷遺跡で銅剣・銅矛・銅鐸が合計380点出土するなど大きな発見が相次ぎ、辺境と思われてきた出雲が、多くの人々や物流の行き交う結節点の役割を担ってきたことがわかった。ヤマト王権は大陸との交流を通してさまざまな知識や技術を習得し、そこで得た舶載品や模倣品を豪族たちに与えることで王権の基盤を固めたと考えられているが、その交易の要衝として出雲は特別な地域とみなされていたのだ。また、天皇家が受け継いできた三種の神器のひとつである勾玉などを一手に生産する玉造の拠点としても、出雲と大和は密接な関係を結んでいた。

膨大な数の考古学的史料から中世の仏像までを紹介し、古代日本のふたつの重要地点をひも解くこの特別展。統一国家の求心力として神話を活用し、荘厳な世界を様々な形で表現した「国家の壮大なデザイン史」として読み解きたい。

中央の展示ケースに16本並ぶ「荒神谷遺跡出土品 銅矛」のほか、出雲で出土した膨大な数の銅鐸や銅剣が集められた展示室のテーマは「出雲 古代祭祀の源流」。

中央右が出雲の、中央左が大和の埴輪「見返りの鹿」。同じモチーフが異なるスタイルで制作されたことがわかる、出雲と大和の比較展示としての側面も展示の見どころ。

四天王像のうち「多聞天立像」(右)と「広目天立像」(左)、2体の「十一面観音菩薩立像」(中央左右)という大和の仏像が並ぶ空間の次には、出雲の四天王像が待っている。

日本書紀成立1300年 特別展『出雲と大和』
開催期間:前期展示 2020年1月15日(水)〜2月9日(日)、後期展示 2月11日(火・祝)〜3月8日(日)
開催場所:東京国立博物館 平成館
東京都台東区上野公園13-9
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:9時30分〜17時
※金、土曜日は21時まで開館
※展示室入場は閉館の30分前まで
休館日:月(2月24日は開館)、2月25日(火)
入館料:一般¥1,600
https://izumo-yamato2020.jp/