コロナ禍で投資に挑戦する人が急増!でも始める前に必須の「あること」は?

  • 文:川畑明美

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投資の利益は「不労所得」ともいわれるので、楽して儲かるというイメージがある。だが決して楽して儲かるわけではなく、勉強も必須だ。kazuma seki-iStock.

コロナ禍でマネープランを見直す人が増え、若年層でも投資を始める人が増えているという。投資の利益は「不労所得」と言われることもあり「楽して儲かる」とイメージしている方も多いが、そういうものではない。もしかして、あなたは経験豊富なプロの投資家は、株価のゆくえが読めるとか思っていないだろうか。残念だが株価の未来は、プロの投資家でもわからない。なぜ、プロでも株価を当てられないのか。市場には、多くの投資のプロが経済の先行きや他の投資家の動きを予想して先回りしようとしているからだ。プロの投資家であっても、抜け駆けするのは簡単ではない。そのような市場での予測は困難だ。投資を始めるのなら勉強することは、必須だ。

 

投資初心者に多いのは、人任せに投資してしまうことだ。プロだと思って安易に信用してはいけない。そういう方ほど、金融機関に「このお金を大きく増やして欲しい」と相談してしまう。金融機関の担当者は、「それでしたら今年のリターンが高かったこの商品は、どうでしょう」と勧めるだろう。だが、今年のリターンが高いということは、来年のリターンも高くなるという証明には、ならない。逆に今年こそがリターンのピークだった場合、購入して短期間で暴落することもあり得るのだ。


投資で儲けるには「安く買って高く売る」ことだ。このように書くと、とても簡単のように思われるかもしれない。だが株価がドンドン下がって先行きの見えない不安な時に購入するのは、かなりの勇気がいるものだ。その逆に株価がドンドン上がって、まだまだ上がるかもと考えられる時に売らなければならないのだ。「売るのはもったいない」と思える時こそ売却の時期といえるのだ。通常の心理とは、真逆の行動をする必要があるのだから「言うは易く行うは難し」なのだ。


筆者の発行するメルマガでアンケートを取ったところこんな回答を得た。「個別株での失敗です。よく言われるように、安いと思って買ったら、さらに下がり、耐えきれず損切りしたら、その後、どんどん上がっていった。一度、大きく含み益が出ていたのに、暴落時に損切りに引っかかり、その後また暴騰していった。入るタイミング、利益確定するタイミングがうまくいかず、失敗したなと感じます」という。アンケートの回答のように、安く買って高く売るのは、とても難しい。

貧乏から抜け出せないのは、「面倒くさい」という考え

お金持ちになるには資産管理は避けて通れない。それを面倒くさいと考えているから、いつまで経っても貧乏から抜け出せない。takasuu-iStock.

ではどうしたらよいのだろうか。リスクについて学ぶことだ。投資においてリスクとリターンは、表裏一体の関係だ。リターンが高ければリスクも高くなる。例えば債券に投資したとしよう。債券は、満期まで保有していれば元本に利息がついて戻って来る。債券を発行した会社が倒産しなければ何年後かに、元本と利息を得られるのでリスクは、少ない。当然リターンも少ない。


一方株式投資の場合は、満期などはない。株式投資とは、「私の会社に出資してくれる方は、いませんか」と出資金を募るもので、会社は株を販売して得たお金を返済する必要はない。株式投資で投資家が儲けるには、自分が差し出した出資金を使ってより良いサービスやモノを作って利益を出してくれることで、株価も上がりそれを売却することで利益を得るしかない。債券投資に比べ株式投資は、リスクが大きい。当然リターンも大きくなる。


リスクが理解できたら、そこに振り分けるお金を考えることだ。自身のリスク容認度を確認して、安全な預貯金と少ないリスクの債券と、大きくリターンが得られるかもしれないが減らす可能性もある株への配分を決めればいい。ただしそれには、家計にどのくらいの資金があるのか、そして収入から毎月どのくらい貯蓄に回せるのか、さらに将来必要な資金はいくら必要なのかをシミュレーションすることだ。


ところが、そういった生活設計をしている人は少ない。生命保険文化センターの調査「令和元年度 生活保障に関する調査《速報版》」によると半数以上の方が「生活設計なし」と答えている。同調査では、どうして生活設計しないのかも聞いているが「経済的余裕がないから」の回答がトップで30.3%だった。前回の記事『資産形成をするために、お金持ちが「必ずやっていること」は?』でも書いた「お金に縁がない人」ばかりだ。前回も書いた通り「管理するほどお金を持っているわけではない」と考えて生活設計をしていないのだ。経済的に余裕がないからこそ、生活設計をしなければならないことに気付いていない。


貧乏から抜け出せない人に多いのは「面倒くさい」という考えを持っている。例えば、スーパーの買い物では安いものを比較検討して購入するのに、保険などはよくわからなくて「面倒くさい」と思って、適当に勧められるまま加入してしまう。もっと怖いのは、マイホームなど返済できる金額なのか試算もしないで購入してしまうのだ。借りられる金額と返済できる金額は違うというのに。


話を元に戻そう。リスクについて学んだら、次に考えるのは、資金の配分だ。家計にあるお金の一部を投資することだ。ところが「いくら投資に回したらいいのかわからない」というご質問をよくいただく。そういう人に限って相談にくる前に、年間の収支を調べていなかったり、預貯金がどのくらいあるのかを把握していない人が実に多い。アドバイスを求めるにしても、材料がなければ何もアドバイスできない。

焦って投資を始めてしまう人ほど、失敗をする

投資をはじめる前には、毎月貯金できる体質になっていることが必須だ。なぜなら投資には元手が必要だ。ゼロ円では投資できない。bee32-iStock.

投資をするには、まず安全資産である預貯金がどのくらいあるのか把握することだ。冒頭でも書いたが、プロでも株価の未来は分からない。分からないものにお金を投じるからこそ、リスクプレミアムであるリターンを得られるのだ。だが、上がるか下がるか分からないものに、資金を全額投入してしまっては、下がった時には使えないなお金になってしまう。そのため、ある程度は預貯金で確保しておく必要がある。ゆえに家計の資産がどのくらいあるのかを調べることが必須になる。そして毎月の収入から、貯蓄に回せる金額を割り出すための収支の計算も必要だ。つまり投資をするには、毎月貯金できる体質になっていないとできないのだ。


投資を始める大前提にまず必要なこととは、毎月貯金ができるようになることだ。投資には、必ず元手が必要だ。投資は掛け算で増えていく。ゼロに何を掛けても永遠にゼロだ。投資は、魔法ではないからだ。「お金がないから投資をしたい」という方もいるが、「お金がない人は、投資もできない」ということだ。そして貯金が少ない人ほどリスクを取りたがる。以前こんな質問を頂いた。「60才を超えている夫婦ですが、手持ち資金250万円を3年後くらいまでに1,000万円に増やす事は可能でしょうか?」


250万円を3年くらいで1,000万円にする利回りを計算してみて欲しい。250万円を3年で1,000万円にするには58.8%もの利回りが必要だ。かなりリスクを取らないとその利回りは、難しい。リスクが高いと言われているFX投資をしたとしても年利30%くらいだ。前述のアンケートでは、このような回答も頂いた。「お金を持っていないと思っていた頃、母と祖母の遺産、父の生前贈与を、FX投資をして損をしてしまった。その後、自分の資産内容をチェックしたら、思っていたより持っていて、そんなに焦って、FX投資をする必要はなかったと後でわかった」という。焦って投資をするのは、最もいけないことだ。急がば回れだ。家計の資産を調べることの重要性をご理解いただけただろうか。


また、大きな資金を一括で投資するのもお勧めできない。こういう相談も増えている。「退職金を運用してマイナスになってしまった…」というものだ。最近の金融機関が退職金の運用として勧めている傾向は、バランス型の投資信託と、先進国債券の投資信託を一括購入するパターンだ。ひと昔前のように手数料の高い投資信託を売りつけるよりはマシなのだが、債券と株式の両方を保有しているバランス型の投資信託に、なぜ先進国債券の投資信託を抱き合わせて買わせるのか、かなり疑問に思う。


予想するには「安全に運用したい」と相談されているからだろう。「安全性を高く」というオーダーを受けて、先進国債券の投資信託をお勧めしたのだと思う。ただし、今はどちらかというと円安の傾向だ。外貨建ての資産は円高の時に購入すると安く買える。しかしドル円が110円の時に購入して105円になってしまえば、購入した先進国債券は値下がりしてしまう。海外旅行に行く時にも、為替は気にするだろう。それと比較したら、そこまで難しい判断ではないはずだ。それなのに、なぜ円安の時に一括で先進国債券の投資信託を購入してしまうのか。投資は難しいという先入観があるのかもしれない。投資をする前に、リスクの勉強と家計の資産の把握、貯金できる体質になっていることが必須だ。

【執筆者】

川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。