ポップながら重力のある演奏で、ジャズの新たな方向を示す。

『ブロウ』

ダニー・マッキャスリン

ポップながら重力のある演奏で、ジャズの新たな方向を示す。

中安亜都子 音楽ライター

1966年、米カリフォルニア生まれ。91年にニューヨークに進出し数々のバンドに参加した後、2000年には自身のカルテットで活動。マリア・シュナイダーのオーケストラのメンバーも務め現在に至る。19年2月にブルーノートで来日公演を予定。©Jimmy Fontaine

デビッド・ボウイの遺作『★』はマリア・シュナイダー、マーク・ジュリアナらニューヨーク発のジャズの精鋭を起用したことでも話題を集めたが、そのなかでも、もっとも大きく貢献したのがサックス奏者のダニー・マッキャスリンだ。その彼の新作『ブロウ』は、長年彼が培ってきた新しいジャズに向けたエネルギーと、ボウイとのレコーディングで得たインスピレーションが新たな創造性を生み出し、一気に結実したことを思わせる。  
すでに複数枚のリーダー作をリリースしているが、ここで心機一転、ボーカルを4人起用し、ストレートなジャズを予想するリスナーの期待を気持よく裏切っている。歌が入ったことでこれまでの作品に感じられた複雑さから解放され、感触はポップだ。ポップではあっても過去の演奏にも通じる重力があり、突き進むようなスピード感は相変わらずで、この人がジャズのイノベーターと言われることがわかる。  
公式コメントによると、ボウイからは「その時に聴こえているものを求めて進めばいい。どう思われるか、どう分類されるかは心配するな」とアドバイスされたという。なるほど、新作は自分の心の赴くままに制作されたのだろう。エレクトロニクスによるサウンドの効果やロック的なフィーリングなど自由で多彩な内容だが、あくまで音楽の核にあるのはジャズであり、それがこの作品を面白くしている。  
ところで90年代以降ジャズの表現は指標を見失ったかのようで、時には袋小路に迷い込んだような印象があった。それを打ち破ったのがヒップホップと融合したロバート・グラスパーの登場だ。マッキャスリンはまた別次元の方向を示し、ここでひとつの成果を得たと言える。ここから彼がどう進展していくのか興味は尽きない。

『ブロウ』
ダニー・マッキャスリン 
SICX30061 
ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル 
¥2,700(税込)

ポップながら重力のある演奏で、ジャズの新たな方向を示す。