脱CO²の世界では、 電気自動車が主流になる。

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    Takeshi Kobayashi
    1959年山形県生まれ。音楽家。2003年に「ap bank」を立ち上げ、自然エネルギー推進や、野外イベントを開催。19年には循環型ファーム&パーク「KURKKU FIELDS」をオープン。震災後10年目の今年、櫻井和寿、MISIAとの新曲を発表。宮城県石巻市を中心に発信するアートイベント「Reborn-Art Festival」も主催している。
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    【自動車】
    AUTOMOBILE
    「ap bank」などの活動を通して環境問題に向き合うなど、サステイナブルな社会について考え、行動してきた小林武史さん。その目に、サステイナブルの行方はどう映っているのか。連載11回目のテーマは「自動車」。ヨーロッパの主要国では、ガソリン車など内燃機関だけで走るクルマへの規制を強めています。アメリカでも、カリフォルニア州知事が2035年までにガソリン車の新車販売を禁止する行政命令に署名しました。環境に負荷をかける石油由来の燃料への依存から脱却し、電気自動車(EV)にシフトする流れは加速しています。

    脱CO²の世界では、 電気自動車が主流になる。

    森本千絵(goen°)・絵 監修 illustration supervised by Chie Morimoto
    オクダ サトシ(goen°)・絵 illustration by Satoshi Okuda
    小久保敦郎(サグレス)・構成 composed by Atsuo Kokubo

    僕はクルマ社会が発展するのを体感しながら育った世代なんです。だから、クルマ自体が好き。友達から買ったトヨタ・セリカを皮切りに、国産車や外車問わずさまざまなクルマを乗り継いできました。EVの開発が進みようやく実用的になったこともあり、5年前からテスラに乗っています。EVがどう進化していくのか、自らハンドルを握りながら探っているところです。

    EVにはエンジンがありません。ガソリンの代わりにバッテリーでモーターを回し、クルマを走らせる。そして、クルマ全体をコンピューターで管理している。実際に乗っていて、テスラのバージョンアップという機能が革命的に感じました。というのが、5年も同じクルマに乗り続けたのだけれど、古くなる感覚がなかった。乗りながら、さまざまな機能をアップデートできるから。常に最新機能が使えるわけです。これまでクルマは4年に一度くらいモデルチェンジするのが一般的でした。テスラはクルマ自体を買い替えさせないというビジネスモデルを目指している。ひとつのものを長く使うという姿勢は、とても新鮮に映ります。

    ガソリン車やディーゼル車への規制が強まり、クルマがEVにシフトしているのは、温暖化対策の一環です。では、世の中のクルマがすべてEVになれば環境に優しいのかといえば、そう簡単な話でもありません。なぜなら、充電するための電気を化石燃料からつくっているようであれば、結局CO²は減らないから。炭素税の導入が議論されているけれど、導入によりEVを充電する電気が何由来なのか可視化されるとしたら面白いですね。自宅では太陽光発電でまかなった電気を充電し、出先でも自然エネルギー由来の電気を充電する。僕はできるだけそう心がけていますし、早くそれが当たり前になればいいと思っています。

    先日、5年間乗り続けたモデルSから、少し小さなモデル3に乗り替えました。航続距離が伸び、給電が早くなり、電費もよくなっている。アップデートだけでは補えない部分も進化した。でもトータルの値付けは安く感じるようになりました。ルックスが少し馴染まないという声を聞くことがあるけれど、どこかウミガメに似ている気がする。僕はウミガメが大好きなので、これは主観的すぎるかな。いずれにせよ、EVはこれから主流になるし、ずっと残っていくと思う。その仕組みが生命との距離感を測っているし、気持ちよい暮らしに対するリスペクトも感じられるから。脱CO2の方向性は、もう変わりません。他のメーカーも開発が進み好みのモデルを選べる日が来るのを楽しみにしています。