アイデアと物語の質で勝負、社会問題に迫る話題作。

『search/サーチ』

アニーシュ・チャガンティ

アイデアと物語の質で勝負、社会問題に迫る話題作。

よしひろまさみち 映画ライター

娘を捜す主人公を演じるのは『スター・トレック』シリーズでお馴染みのジョン・チョー。監督はグーグルグラスだけで撮影したという短編で注目された、インド系アメリカ人、アニーシュ・チャガンティ。本作が劇場用映画デビュー作となる。

スターの超大作がヒットを独占するサマームービー市場。その定説に一石を投じる異変が、この夏のアメリカであった。それはアジア系俳優映画の大ヒット。シンガポールの不動産王御曹司とニューヨーカー女子の恋愛を描いた『クレイジー・リッチ!』は全米で2週連続首位を獲得。もう一作は娘の失踪の謎を追う父の姿を描くサスペンス『サーチ』で、9館で封切りし1週間で1100館以上の拡大公開という異例のヒットを記録した。
どちらも白人のスター俳優はおらず、キャストのほとんどがアジア系俳優ということで話題になった。だが、この大ヒットに結びついた要因は、この『サーチ』のほうが独創的だ。いわば日本でこの夏の話題をかっさらった『カメラを止めるな!』のように、よく練られた脚本と伏線の巧さ、撮影や編集による見せ方のクリエイティビティが高く評価されている。
最大の特徴は、全編パソコンかスマホの画面内で進行するということ。このアイデアは、本作の制作会社が4年前にスマッシュヒットさせた『アンフレンデッド』からきたものだ。これはスカイプのグループチャットとSNSの画面だけで構成した心霊ホラーだが、ほとんどが登場人物の顔のアップ動画ということに賛否が分かれた。
本作は同様のアイデアを使いつつ、その欠点を見事に克服したサスペンスだ。主人公が娘捜しのためにさまざまなツールを使い多くの人々と関わっていくことで、世界観を広げることに成功している。しかもテーマも奥深い。“アメリカの郊外におけるアジア系”、“シングルファーザー家庭”、“リアルな人間関係が希薄な学校生活”など。社会問題に迫るテーマ性は、観る者をグイグイと引き込む。この作品のヒットは、アイデアと物語の質を純粋に求める観客の声が浮き彫りになったといえるだろう。

『search/サーチ』
監督:アニーシュ・チャガンティ
出演:ジョン・チョー、デブラ・メッシングほか
2018年 アメリカ映画 1時間42分 10月26日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて公開。
http://www.search-movie.jp

アイデアと物語の質で勝負、社会問題に迫る話題作。