自分はどのタイプの「虫」だろう? 思わず我が身を振り返る。

  • 文:今泉愛子

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『本の虫の本』

林哲夫/能邨陽子/荻原魚雷/田中美穂/岡崎武志 著 

自分はどのタイプの「虫」だろう? 思わず我が身を振り返る。

今泉愛子ライター

「本の虫」とは、どんな虫なのか。ここに登場する5人の虫たちの本業は、書店員、古書店経営、装丁家、ジャーナリストなど単に本が好きというだけでなく、まさに本とともに暮らし、本で食べている虫たち。その5人が本にまつわる言葉を、自由に解説した。
本好きには、本の内容が好きな者と、物としての本自体が好きな者がいる、と書かれているが、多くの人は両者の性質を併せもっているだろう。本書の内容も多岐にわたる。日々本に積もっていく埃のこと、古書店の消しゴムの消費量、ある映画に、大量の文庫本をティッシュボックスの空き箱に収納していたシーンがあったこと、さらにロンドン大学では古本の匂いについて研究され、チョコレートやココア、コーヒー、木材などの言葉が使われているという紹介もあるから面白い。
「つんどく」という言葉は意外と歴史が古く、初めて使われたのは明治34年(1901年)に遡る。その意味は、大金持ちは読まなくていいから、出版される本をすべて1冊ずつ買うくらい太っ腹でいいのではないか、ということだったが、大正15年(1926年)には、現在のような使われ方をしたらしい。
本への愛情は、すみずみまで行きわたっている。解説した150以上の言葉を、本にまつわる習性や苦悩、偏愛、さらに書店、読書などジャンルごとに棚分けされた目次を制作し、本文中で引用した書籍の索引も充実。さらに300ページ以上の全ページ脇には、関連するテーマで書かれた別の文章を掲載ページとともに紹介。次から次へと興味がつながっていくから楽しい。
本をたくさん持っている人に決してしてはいけない質問は、「全部読んだんですか?」。そう、その通り。「お薦めはどれですか?」と聞かれると大喜びで解説するが、それを聞かれるともじもじしてしまうのが本の虫たちの知られざる習性だ。

『本の虫の本』

林哲夫/能邨陽子/荻原魚雷/田中美穂/岡崎武志 著 
創元社 
¥2,484(税込)