カラフルな音が弾ける、明るくエネルギッシュなベック最新型。

  • 文:山澤健治

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『カラーズ』

ベック

カラフルな音が弾ける、明るくエネルギッシュなベック最新型。

山澤健治エディター/音楽ジャーナリスト

今世紀を代表するポップ・アイコンと呼ばれることへのプレッシャーや反発があったわけではないだろうが、グラミー賞受賞作となった2014年のベックの前作『モーニング・フェイズ』は、戦前のブルースやフォーク、カントリーといった自らのルーツともいえる弾き語りミュージックを礎石につくりあげた、穏やかで静謐な作品だった。

あれから3年半。通算13作目となる新作『カラーズ』は、前作から一転、ポップ・アイコンたる才能を思う存分に発揮したキャリア史上最強のポップ・アルバムに仕上がっている。こんな弾けたベックを待っていたというファンもきっと多いことだろう。

ベックの最新型ポップ作が生まれた背景には、共同プロデューサーにアデルやシーアなどを手がけた売れっ子、グレッグ・カースティンを迎えたことが影響しているのは間違いない。しかし、「ここ数年のライヴ・パフォーマンスで感じたお祭り気分のような喜びに満ちたエネルギー、そして15年に一緒にツアーを回ったザ・ストロークスのようなバンドのエネルギーを吸収した」と本人が米『ローリング・ストーン』誌のインタビューで語っているように、ステージやガレージで仲間と一緒に音楽を奏でる楽しさやロックの初期衝動に改めて目覚めたことが、なにより大きかったのではないだろうか。

というわけで、収録曲はどれもライヴ映えしそうな明るくエネルギッシュな曲ばかり。高揚感あふれるエクスペリメンタル・ポップ、トーキング・ヘッズ的エキゾティシズムが漂うダンス・トラック、マルーン5やファレル・ウィリアムスと比較されそうな超絶ポップ、ミクスチャー感覚たっぷりのガレージ・ロックなど、まさにタイトル通り、ビビッドな原色使いのカラフルで刺激的な曲がずらりと並ぶ。

10月の公演では終盤に同アルバムからの曲が登場し、すでにアンセムのような盛り上がりを見せた。そんな、思わず身体が揺れる珠玉のポップ・アルバムだ。

1994年の「ルーザー」の大ヒットを足がかりに、名実ともにアメリカ音楽界を代表する存在に。前作『モーニング・フェイズ』は第57回グラミー賞において、最優秀アルバム賞など3部門を受賞。11/24にはラッパーのDAOKOとのコラボシングル「Up All Night」をリリースした。

『カラーズ』

ベック 
HSE-6963 
ホステス・エンタテインメント 
¥2,689(税込)