新しいテクノロジーによって、未来の食ビジネスはどう変わる?

  • 文:今泉愛子(ライター)

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『フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義』田中宏隆/岡田亜希子/瀬川明秀 著 外村 仁 監修 日経BP ¥1,980(税込)

【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】

「このままでは日本は、世界で起きているフードテック革命に乗り遅れる」。2016年にアメリカのシアトルで開催された、世界初のフードテックに特化した国際会議「スマートキッチン・サミット」に参加した著者らは、そんな危機感を覚えたという。世界では、フードビジネスに新しいテクノロジーを活用したフードテックが、大きな革命を起こしているのだ。本書では、勃興する食の新ビジネスをあらゆる角度から解説。食の未来を予測していく。

たとえば代替プロテイン市場では、単に肉の代用品を提供するのではなく、味や食感を限りなく肉に近づけ、調理すると赤身が茶色く変化して肉汁が出るよう進化。肉より栄養面でも優れたものへ開発が進んでいる。

レジスタッフ不要の次世代型コンビニ「アマゾン・ゴー」は、利用者がアプリをダウンロードしてクレジットカードを登録すると、商品を手にしてゲートを通過すれば自動的に決済されるシステムだ。店舗が効率化し、利用者の滞在時間は減少。新型コロナウイルスの感染リスクも減るため、同様の店舗が増えていくと予測する。

顧客の健康に配慮するフードテックも多い。イギリスでは唾液サンプルを送るとDNA分析が行われ、その人に合った食事を提供するレストランができた。食はあらゆる人にとって大切なことであり、ウェルビーイングの視点抜きでイノベーションは実現しないのだ。スーパーマーケットはこれまで、より多くの食品を買わせようと工夫したが、その結果、客のダイエットを邪魔することもあった。しかしこれからはそれでは生き残れない。生産者とのつながりを創出したり、DNA検査で客に合った食品を提案したりと豊かな購買行動につながるサービスも必要になってくると指摘する。

食の未来を、ビジネス視点と生活者視点から問い直す一冊だ。



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