新世代ジャズシーンの鍵盤奏者が、同志と生み出したバイブス

  • 文:加藤一陽

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『レジスタンス』

ブランドン・コールマン

新世代ジャズシーンの鍵盤奏者が、同志と生み出したバイブス

加藤一陽「音楽ナタリー」編集長

新世代ジャズシーンで異彩を放つ鍵盤奏者、ブランドン・コールマンの新作アルバム『レジスタンス』が発売された。
フライング・ロータスやロバート・グラスパーの登場を機に、日本でも注目を集めるようになった新世代ジャズシーン。J・ディラ以降のヒップホップやR&Bの影響を受けたプレイヤーたちのリベラルな感性によって表現の幅を広げてきたこのシーンの中でも、ブランドンの存在感は際立つ。カマシ・ワシントンやサンダーキャットらとの共演で注目した人が多いかもしれないが、スティーヴィー・ワンダーやケンドリック・ラマーらからも声がかかる売れっ子としても知られている。
彼の自身の名義での新作は、フライング・ロータス主宰の「ブレインフィーダー」レーベルからのリリースに。内容は2015年発売の前作『セルフ・トート』から続くファンク、ジャズ、ブギへの愛情を感じさせるもので、それらをリッチなサウンドでアップデートさせている。あえて別のアーティストの名を挙げるならば、デイム・ファンクやPファンク、ハービー・ハンコックなどを連想させるコズミックなディスコブギから、叙情的なAOR風のトラックまでが目白押し。そんな1970〜80年代の情景が現代的な音像と音圧で表現されている。
録音にはカマシらWCGDの面々のほか、パトリース・クインやエンダンビなど豪華シンガー陣が参加。グルーヴィでダンサブル、そしてロマンチック……そんな音楽の素晴らしさを、仲間たちと奏でたからこそ生まれ得るバイブスでもってパッケージしたと言えそうな作品だ。個人的にはコーラスやハープの音色が醸し出す表題曲のスピリチュアルな雰囲気が、この作品の評価を特定のシーンのみにとどまらせず、幅広い層に届くきっかけになるように感じられた。

米カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。カマシ・ワシントン、サンダーキャットらとLA新世代ジャズシーンを牽引する鍵盤奏者。近年ではラッパーのチャイルディッシュ・ガンビーノと共演し、グラミー賞授賞式のステージでバックを務めた。

『レジスタンス』
ブランドン・コールマン 
BRC-573 
ビート・レコーズ 
¥2,376(税込)