ジャズの未来を刻んでいく、俊英ドラマーの最新作。

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    『CLNUP4』

    石若 駿

    ジャズの未来を刻んでいく、俊英ドラマーの最新作。

    中安亜都子音楽ライター

    1992年、北海道生まれ。12歳で日野皓正と共演。2011年、東京藝術大学器楽科入学。15年、同大を首席で卒業。同年に初のリーダー作をリリース。これまで山下洋輔、大西順子、カート・ローゼンウィンケル、ジェイソン・モランなど国内外の有名演奏家と共演。

    ジャズはリズムを「聞く」音楽であるとも思う。遡ればその歴史の中で、ピアノやサックスなどメロディーを奏でる演奏家のほかにも、リズムを刻むドラマーが数々の名演奏を残し、歴史を塗り替えて来た。近年、マーク・ジュリアナ、マーク・コレンバーグら新感覚の気鋭のドラマーが続々登場し、シーンに新鮮な息吹を吹き込んでいる。

    そんななか、1992年生まれの石若駿の存在は、なんだかこの音楽の未来を思わせワクワクさせるのだ。その彼のジャズ演奏に特化した久々のリーダー作『CLNUP4(クリーンナップ・カルテット)』は、日本のジャズのレベルが世界的に見てもとても高いと確認できる内容だ。メンバーはほかに井上銘(ギター)、須川崇志(ベース)、それにオーストラリア人のトランペッターのニラン・ダシカ。

    1曲目は石若のソリッドでキレのいいドラムで始まり、演奏の背骨となって支えていく。タイムが正確という当たり前のドラミングがここではとても気持ちが良い。各メンバーの緻密で引き締まった演奏はレベルが高く、ジャズの最前線をアグレッシブに突き進んでいることを思わせる。彼は5曲中4曲を手がけているが、作曲の現代的に洗練されたセンスにも注目したい。特に「Playgroundz」の叙情的で流れるようなメロディーと、16ビートを刻むドラムに絡む各メンバーの演奏は、本作の白眉だろう。

    ジャズ演奏に特化したと先述したが、彼はまた様々なシンガーをフィーチャーしたシリーズ「SONG BOOK」を3作リリースし作曲・編曲でも才能を発揮している。3作も作るほど歌へのこだわりがあることも驚きだが、つまりはドラマーとしてだけではなく音楽全体を柔軟に表現したいという姿勢なのだろう。歴史を塗り替えていくかどうかは分からないが、その将来はとても豊かな予感がする。

    『CLNUP4』
    石若 駿
    YSS-0001
    アポロサウンズ
    2,160(税込)