ウディ・アレンの監督50作目は、ニューヨークへの愛があ...

『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』

監督/ウディ・アレン 

ウディ・アレンの監督50作目は、ニューヨークへの愛があふれた物語。

ミヤザキタケル 映画アドバイザー

シャラメ演じるギャツビーの元恋人の妹役にセレーナ・ゴメス。フレッシュなキャストを中心に、ジュード・ロウ、ディエゴ・ルナらが集った。メトロポリタン美術館やセントラルパークなど、ニューヨークの風景がもうひとりの主人公に。 © 2019 Gravier Productions, Inc

半世紀近くにわたりコンスタントに映画を撮り続けてきた御歳84歳の大ベテラン、ウディ・アレン。通算50作目となる監督作は、生粋のニューヨーカーであり、これまでにもマンハッタンやブロードウェイを舞台に物語を紡いできた彼が、初めてタイトルにその名を冠するまでにニューヨークに対する愛が込められた一本だ。
古き良き文化を愛し、拝金主義の母を嫌悪するブルジョワ大学生のギャツビー(ティモシー・シャラメ)が、大学新聞の取材で有名映画監督にインタビューすることになったジャーナリスト志望の恋人アシュレー(エル・ファニング)に同行し、故郷・ニューヨークのこだわりの名所を案内しようと事細かに計画を立てるも、予期せぬ事態の連続で歯車は狂い出し、恋人たちの価値観の違いが浮き彫りになっていく。
アレン作品である以上、一癖も二癖もある登場人物ばかり出てくるのだが、総じて言えるのは、自分が生きていくべき道筋を見つけられていないか、見失ってしまっているという点だ。ニューヨークという街が持ち合わせる不思議な引力に引きずり込まれ、一方はどん底へ、一方は華やかな世界へと身を投じていくことになるのだが、それぞれに過ごす時間の中で己という人間の性質を目の当たりにし、自分が生きていくべき世界を、関わっていくべき相手を強く自覚するのである。それは即ち、己自身のアイデンティティを理解していくということである。
雨はふたりを近づける。雨はふたりを留まらせる。雨は多くのことを洗い流す。雨が降っていてこそ出合えるニューヨークの美しい街並みと、コメディタッチでありながらも上質でロマンティックな人間ドラマ。雨の日を好むか、疎ましく思うかは人によって異なるが、雨の魔法がかかった本作を目にすれば、きっと雨の日を愛おしく思えるようになるはずだ。

『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』
監督/ウディ・アレン 
出演/ティモシー・シャラメ、エル・ファニング、セレーナ・ゴメスほか
2019年 アメリカ映画 1時間32分 7月3日より新宿ピカデリーほかにて公開。
https://longride.jp/rdiny/

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