タイラー・ザ・クリエイターも参戦! R&Bの歌姫が4thアルバムをリリース

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    『ルージュ』

    ユナ

    タイラー・ザ・クリエイターも参戦! R&Bの歌姫が4thアルバムをリリース

    加藤一陽「音楽ナタリー」編集長

    1986年、マレーシア生まれ。2012年に、ファレル・ウィリアムスのプロデュースで全米デビュー。その後、H&MのTVCMへの楽曲提供、「バーニーズ ニューヨーク」の広告ビジュアルへの登場など、米国のポップ・カルチャーにおける重要な位置を占める存在へと成長した。

    マレーシア出身、アメリカを拠点に活動するシンガー・ソングライターのユナが、4thアルバム『ルージュ』を完成させた。ファレル・ウィリアムスや、アッシャー、DJプレミアらとの共演や、ジ・インターネットの楽曲への参加など、これまで数多くのトピックを作ってきたユナ。彼女にとって前作から3年、制作に2年を費やした今作は、個性的な仲間たちに導かれながら自身のマインドを探る旅を、音楽に昇華したもののように感じられた。

    注目は、そのゲスト陣。タイラー・ザ・クリエイター、G・イージー、カイル、リトル・シムズ、マセーゴらシーンを賑わす飛び道具に加え、ジェイ・パークこと元2PMのパク・ジェボムやMIYAVIが名を連ねている。音に耳を傾ければ、全体のトーンは現代的なソウル、R&Bテイストではあるが、今作はいつにも増して音楽的な芳醇さを前面に押し出した印象に。サンプリング的な音作りや中低域を押し出したビートなどによる、キャンバスに滲む水彩画のようなトラックの雰囲気がウェットな歌とマッチして、慈悲深く響く。もしかしたら内向的と表現する人もいるだろう。そんな落ち着きと叙情性が魅力的だ。

    ゲストたちのポジショニングも絶妙で、あくまで楽曲の一部に溶け込むような立ち位置に。彩りではなくユナの現在を一緒に探る旅の仲間たち──一貫してそんな方針に思えた。聴き進めるほどに、ユナが自身の心にある“漠然とした何か”を整理しようとする行程や葛藤を覗いているようで、聴き手の感性をくすぐる。

    音楽というものがアートのひとつのジャンルだからこそ成り立つ、発信者と受け手の間の刺激的なコミュニケーションを、メジャーを舞台に堂々と実践する態度が心強い。あくまで彼女は歌い手ではなくアーティスト。そんなことを再確認できた。

    『ルージュ』
    ユナ
    UCCB−1046
    ユニバーサル クラシック&ジャズ
    ¥2,700(税込)
    7/12発売