少年の姉や級友の心を知った時、改めて涙がこみ上げる。

『ワンダー 君は太陽』

スティーヴン・チョボスキー

少年の姉や級友の心を知った時、改めて涙がこみ上げる。

斉藤博昭 映画ライター

原作はグラフィック・デザイナーとして活躍していた女性が初めて執筆し、ニューヨーク・タイムズのベストセラーリスト第1位を獲得した小説『ワンダー』。ディズニーの実写版『美女と野獣』のプロデューサーが争奪戦の末、映画化権を得た。© 2017 Lions Gate Films Inc. and Participant Media, LLC and Walden Media, LLC. All Rights Reserved.

「この映画、感動するよ」と人に薦めるのは難しい。難病や死、別れなどベタな展開に泣きたい人、繊細な部分を自分なりに見つけて心を締めつけられたい人……と、感動の「需要パターン」はそれぞれだからだ。でも、ごく稀に、あらゆる需要に応える感動作が誕生する。『ワンダー 君は太陽』は、顔に疾患をもって生まれた10歳の少年が主人公だ。初めて学校に通うことになり、クラスメイトや家族との関係が綴られ、しかも主演が『ルーム』の天才子役ということで、ベタな感動は保証される。 
しかしこの映画の核心は、そこではない。少年のクラスメイトは、本当はどんな気持ちで彼に接したのか。少年の姉は、弟のことばかりに時間を費やす両親のもとで、どんな孤独を抱えてきたのか。さらに姉の親友の複雑な心情まですくい取る。一見、散漫になりそうな作品の構造を、それぞれの人物の視点でチャプターに分け、しかも巧妙に視点をシンクロさせることで、物語の大きなうねりが形成されていく。 
その結果、全編の4分の3くらいは観る者の胸になにかが込み上げるシーンとなり、感動の波が引いては満ちる、心地よい反復が止まらない。どの映画でもそうだが、各人物の本心を知った後で頭から観直すと、新たな感動が生まれることがある。その作用が今作では絶大。1回目で涙の量は十分だと感じた筆者も、2回目はさらに泣けた。 
監督のスティーヴン・チョボスキーは、実写版『美女と野獣』で脚本を担当した。同作のラストで野獣は人間の王子の姿に戻るが、そのままの外見で幸せだったのでは? この疑念への素直な回答を、『ワンダー 君は太陽』で受け止める人もいるだろう。主人公が「まわりと違う」ことを観ているうちに忘れ、気づけば、多くの人が味わう人生の喜怒哀楽が浮かび上がってくる。だからこそ、誰に対しても「感動できる」と薦めたくなるのだ。

『ワンダー 君は太陽』
監督:スティーヴン・チョボスキー
出演:ジュリア・ロバーツ、オーウェン・ウィルソン、ジェイコブ・トレンブレイほか
2017年 アメリカ映画 1時間53分 6月15日よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開。
http://wonder-movie.jp

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