言葉と身体で描き出す、新しいダンスのスタイル

    Share:

    Creator’s file

    アイデアの扉
    笠井爾示(MILD)・写真
    photograph by Chikashi Kasai
    倉石綾子・文
    text by Ayako Kuraish

    言葉と身体で描き出す、新しいダンスのスタイル

    平原慎太郎Shintaro Hirahara
    ダンサー/振付家
    1981年、北海道生まれ。ダンスカンパニー「オルガン・ワークス」を主宰するかたわら、コンドルズ、大植真太郎、カーメン・ワナーらの作品に携わる。2016年、「トヨタ コレオグラフィーアワード」にて「次代を担う振付家賞」と「オーディエンス賞」をダブル受賞。

    言葉と身体を駆使してユニークな世界観を紡ぐ、フィジカル・パフォーマンスの「談ス」。大植真太郎、森山未來とともに2014年から同シリーズに取り組むのが、コンテンポラリーダンサーの平原慎太郎だ。
    「談ス」とは「談話、つまり打ち解けて語り合う際の、言葉を発する直前の瞬間の空気を切り取り、その一瞬から生じうる可能性を面白おかしく膨らませたもの」と平原は言う。 
    振付家、演出家としても活動する彼がダンスを始めたのは、子どもの頃に聴いていたヒップホップがきっかけだ。「中学生という多感な時期に、言葉遊びの究極とも言えるラップに夢中になりました。音楽という決められた枠の中で、リズムや韻、言葉でアーティストがそれぞれの個性を表現する、その幅広さが新鮮だった。そしてミュージックビデオを観るうちにダンスに興味をもち、その影響でヒップホップダンスを始めました」 
    真剣にダンスと向き合うなかで選んだ道は、劇場規模のステージで自分なりの表現方法を追求できるコンテンポラリーダンスだった。平原いわく、コンテンポラリーとは「踊り手個人の主観が入るジャンル」だからだ。 
    彼が手がけるステージには、ダンスと演技に合わせて「言葉」もしくはセリフが用いられることが多い。 
    それはなにか新しいスタイルを模索するというより、ひとつのテーマを表現する上で必然としてのパフォーマンスを、「言葉」にも求めた結果だと平原は言う。ダンスや演技と同様、身体表現のひとつとして捉える「言葉」は、ヒップホップにルーツをもつ平原ならではの感覚だろう。 
    そういった意味では、ときに「格闘技」や「コント」とも評される「談ス」シリーズのアプローチも同様に言葉を大切にしている。ソロのステージをつくる際は自身の内面をダンスや演技、言葉としてさらけ出す作業を積み重ねるが、「談ス」ではパフォーマー3人の関係性にフォーカスした表現や言葉を追求する。その関係性から生まれる瞬間のドキュメントこそ、この舞台の醍醐味なのだ。 
    5月15日から「談ス・シリーズ第3弾」の公演が始まる。3人が提示するアイデアもその受け止め方も、回を重ねるにつれて深化してきたというこのパフォーマンス。個性豊かなふたりに対して、平原はどんな駆け引きを繰り広げるのだろうか。サイトはこちらから→http://theorganworks.com

    works

    「談ス・シリーズ第3弾」は、15市・22公演が決定している。東京と埼玉では5月15日になかのZERO小ホール、19日に町田市民ホールほかにて公演。photo:matron

    ※Pen本誌より転載