気鋭の「音響製造業者」から届いた、 《UNIシリーズ》三部作の完結編。

  • 文:小川 哲

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『ユニ・イーキュー・エーヴィー』

アルヴァ・ノト

気鋭の「音響製造業者」から届いた、 《UNIシリーズ》三部作の完結編。

小川 哲SF作家

坂本龍一や池田亮司とのコラボレーションで知られるアルヴァ・ノト。彼は本名のカールステン・ニコライ名義で西武渋谷店A館エントランスの演出も担当するインスタレーション・アーティストでもある。そんなノトの新作アルバム『UNIEQAV』は、『UNITXT』『UNIVRS』に続く《UNIシリーズ》三部作の完結編だ。

自身を「ミュージシャン」ではなく、「音響製造業者」と見なすノトは、数々の実験的で思弁的な電子音楽作品で知られているが、この《UNIシリーズ》は少し毛色が違う。代官山のクラブ〝UNIT〞にブッキングされた際、ライブ用に作った音源がきっかけというだけあって、ノトの特徴である硬質なアンビエント感はそのままに、とてもダンサブルで聴きやすいアルバムに仕上がっている。

まるでライブの始まりを感じさせるような静かなミニマル曲で始まり、中盤では情感たっぷりな曲「Uni -Blue」も入る。フランスの音響詩人アン=ジェイムス・シャトンとコラボした「Uni -Dna」は、DNAを構成するアミノ酸が歌詞となっている、一風変わったボーカルトラックだ。そして最後の「Uni -Chord」はノイジーで感動的なシューゲイザー風グリッチ曲(?)で、《UNIシリーズ》の終わりにふさわしい大団円を迎える(気がする)。

もちろん難しいことを考えずとも、最初から最後まで「踊れる」曲ばかりなので大丈夫。数学、データ、コード、言語、自然など、「音」をとりまくあらゆる情報にインスピレーションを受けつつ難解で高度な音楽を作り続けてきたノトが、ダンスのために完璧なアルバムを作ったのだ。本作は三部作の完結編でありながら、ノトの、あるいは電子音楽や実験音楽の入り口としてもオススメしたい。

ベルリンを拠点に活動するサウンド/ビジュアル・アーティスト。音楽、アート、科学をハイブリッドした作品で、エレクトロニック・ミュージックからメディア・アートまで多彩な領域を横断する独自のポジションを確立し、高い評価を得ている。

『ユニ・イーキュー・エーヴィー』

アルヴァ・ノト 
PDIP-6576 
p*dis/インパートメント 
¥2,592(税込)