世界で最も利用される地図へ、成功するまでの刺激的な道のり。

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    『NEVER LOST AGAIN グーグルマップ誕生』

    ビル・キルデイ 著

    世界で最も利用される地図へ、成功するまでの刺激的な道のり。

    今泉愛子ライター

    評判のレストランやショップ、あるいは、いまいる所からいちばん近くにあるコンビニを見つけたい時、私たちはまずスマホで検索する。この場合、多くの人が頼りにしているのはグーグルマップだろう。
    著者は、グーグルマップ成功の立役者と言われるジョン・ハンケの学生時代からの友人で、ハンケが立ち上げた地図空間開発ビジネスを手がけるキーホール社でマーケティング・ディレクターを務めた人物。資金繰りに窮していた同社がグーグルに買収され、グーグルマップが世界中で最も利用される地図サービスへと成長する過程をリアルに体験したひとりだ。
    これまでスタートアップ企業の成功物語は多く出版されてきたが、それらは、技術開発や資金繰り、チームワークやマーケティングなど経営に主眼を置いたものが多かった。
    しかし本書は、もっと人間味がある。学生時代のハンケが、成績優秀者に渡されるTシャツに決して袖を通そうとはしなかったことや、グーグルが買収を提示した時、キーホールの社員29名全員の雇用を最優先事項としたことなどを明かす。
    グーグル社内の様子も生々しい。最新機器を揃えたオフィスはまるでアップルストアのようで、高級そうなジュースやスナックを自由に食べていいし、敷地内を移動するための電動スクーターやセグウェイも用意されている。
    社員は軒並み優秀でつつがなく仕事をこなすが、水面下では常に権力争いが進行中。なかでも検索部門を統括するマリッサ・メイヤーとキーホールチームとの確執は手に汗握る展開だ。
    グーグルを卒業したハンケは、再び世間をあっと言わせる。それはなにか。最後まで驚きの連続で、刺激に満ちたノンフィクションだ。

    『NEVER LOST AGAIN グーグルマップ誕生』
    ビル・キルデイ 著 大熊希美 訳
    TAC出版
    ¥1,944(税込)