絵画をめぐる人々の欲望を、生々しく照らし出すドキュメンタリー『レンブラ...

絵画をめぐる人々の欲望を、生々しく照らし出すドキュメンタリー『レンブラントは誰の手に』

文:中村剛士

監督は『みんなのアムステルダム国立美術館へ』で注目を集めたウケ・ホーヘンダイク。画商やコレクターをはじめレンブラントに魅了された人々を追いかけ、美術界の光と影を描き出すドラマティックなドキュメンタリーを完成させた。©2019DiscoursFilm

【Penが選んだ、今月の観るべき1本】

「レンブラントライト」をご存じだろうか。ポートレートを撮影する際、斜め上から光を当てて陰影を強調させ、顔の彫りの深さを感じさせるようなライティングは、プロから自撮り写真にまで多用されている。この素敵な名称がついた“光と影”による撮影テクニックは、17世紀オランダ絵画の黄金時代を代表する画家、レンブラント・ファン・レイン(1606~69年)が肖像画を描く際に用いた技法に由来する。絵画に興味がなくても、レンブラントが生み出した表現方法を現代の我々も知らず知らずのうちに用いているのだ。あなたのスマホやインスタグラムにも、「レンブラントライト」を取り入れた写真が山ほどあるだろう。そうした意味で、現代人に最も影響を与えている画家と言っても過言ではない。

この映画にはレンブラントの描いた4点の肖像画が登場する。それらをめぐって貴族、画商、コレクター、美術館がそれぞれ縦糸横糸となり、物語を織り成していく。もちろんどの絵画にもレンブラントライトの効果が見て取れ、それと呼応するように登場人物たちの光と影が描かれる。フィクションではなくドキュメンタリーだからこそ味わえる醍醐味が、オランダ特有の景色とともに上手くまとめられており、最初から最後まで目が離せない。

独自の眼でレンブラントの真作を「発見」する画商、ロスチャイルド家から競売に出された作品を、外交問題にまで発展させてしまうふたつの美術館、ひとり静かに作品と対峙することを希求する老いた貴族、レンブラントの絵にキスをしたと語るアメリカの大富豪など、これほどクセの強い役者を揃えた、見どころの多いドキュメンタリーは観たことがない。名誉や欲望を包み隠すことのない登場人物たちに、まるでとりわけ強いコントラストを付けたレンブラントライトが当てられたような、興味深い一本だ。

©2019DiscoursFilm

©2019DiscoursFilm

『レンブラントは誰の手に』
監督/ウケ・ホーヘンダイク
出演/ヤン・シックス、エリック・ド・ロスチャイルド男爵ほか 2019年
オランダ映画 1時間41分  2月26日よりBunkamuraル・シネマほかにて公開。
http://rembrandt-movie.com/

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