小林武史 サステイナブルの行方。
自律分散することで、「最適解」を導き出す。
オクダ サトシ(goen°)・絵 illustration by Satoshi Okuda
小久保敦郎(サグレス)・構成 composed by Atsuo Kokubo
石炭や石油などの化石燃料は、何千万年という長大な時をかけて生まれたものです。それを近代になって掘り起こし、急激に燃やしてきた。それが温暖化や気候変動の一因であるという説には説得力を感じますし、そこからシフトチェンジすべきだと思います。そんな脱炭素社会に向け、再生可能エネルギーの実用化が進んでいます。北欧は洋上風力発電に積極的ですし、最近ではゴミを有効活用したバイオマス発電も実用段階に入っているようです。
特に太陽光発電は、重要な位置づけだと思います。タービンを回さずに発電するのは、本当に優れた技術。おかげで資本力のある事業者だけでなく、個人でも発電できるようになりました。
木更津で運営する循環型農場「クルックフィールズ」には、約8000枚のソーラーパネルを設置してあります。発電量は、およそ2MW(メガワット)。僕らはソーラーファームと呼んでいます。そもそも僕がap bankを設立したのは、環境プロジェクトを応援するため。だからクルックフィールズに再生可能エネルギーを導入するのは当然のことでした。ちょうど日本が太陽光発電を推進しているタイミングで、固定価格買取制度が導入されようとしていました。まずは売電からのスタートだけれど、いずれ自家消費にまわしたいと考えていたのです。そんななか、房総半島台風で起きた大規模な停電は、大きな契機になりました。調べるとテスラをはじめ、蓄電装置が大幅に進化を遂げている。ソーラーパネルを増設し、自家消費のシステムを新たに構築しても、コスト的に大丈夫なことがわかった。いま工事を進めていて、春から晴れた日の電力はオフグリッドにすることも可能になる予定です。
中央に依存するのもいいけれど、自律分散型の社会のほうが、より豊かさをつくりだす可能性があるのではないか。クルックフィールズは、そのモデルケースでもあります。自分たちで責任をもって自由に生きることで、生きる豊かさをつくりだしていくのです。いまは自律してそれぞれが離れていても、情報をやりとりし、つながることができる時代。ただ、そのためにはエネルギーが必要であり、その問題を避けて通ることはできません。
トヨタ自動車が新型MIRAIを発売し、燃料電池の開発を一歩前に進めました。ほかにも、新たな動きが期待されます。エネルギーの進化と多様化は、地域に分散するだけでなく、誰もが自律していける可能性をはらんでいる。そう考えています。