技術進歩や仲間の犠牲があって、初めての偉業が成し遂げられた。

『ファースト・マン』

デイミアン・チャゼル

技術進歩や仲間の犠牲があって、初めての偉業が成し遂げられた。

高森郁哉 ライター/英日翻訳者

感情を露わにすることがほとんどないアームストロングの内面を、わずかな表情の変化で雄弁に伝えたライアン・ゴズリング。家族との時間を犠牲にせざるを得ない夫との関係に葛藤を抱える妻を、『ザ・クラウン』のクレア・フォイが演じている。©Universal Pictures

最初に事を成した人物は歴史に名を残す。映画を発明したリュミエール兄弟。有人動力飛行のライト兄弟。そして、月面に降り立ったニール・アームストロング。『ファースト・マン』はアームストロングの公認伝記に基づき、1969年にアポロ11号で月面に到達するまでの9年間を描いた作品だ。
映画は1961年、テスト飛行士のアームストロングがロケット機を操縦する場面から始まる。娘を病で失った悲しみに耐え、彼はNASAの宇宙飛行士に応募。ガガーリンによる初の有人宇宙飛行で米ソの宇宙競争が一層激化し、ケネディ大統領が月への有人宇宙飛行を目指すアポロ計画を発表した年のことだ。
『ラ・ラ・ランド』でアカデミー賞6冠を達成したデイミアン・チャゼル監督の3作目の長編で、主演のライアン・ゴズリングとは前作からの再タッグだ。ふたりが描くアームストロング像は、熟練の操縦技術と不測時にも動じない精神力を備え、私生活では寡黙で家族思いの男。ただし決してひとりの偉業ではなく、科学技術の進歩と大勢の支え、そして仲間たちの犠牲によって達成されたことも語られる。
映像面でも、宇宙が舞台の名作を継承しつつ、最新技術も活用してアームストロングの挑戦をリアルに体感させる。宇宙船の窓からの光景は、NASAから提供された宇宙空間の実写映像を巨大なLED画面に映し出して撮影。ジェミニ8号のドッキング場面では美しいワルツが流れ、キューブリックの『2001年宇宙の旅』を彷彿とさせる。一人称視点のショットは、観客自身が宇宙船に乗り込み、月に降り立つかのような没入感をもたらす。そしてまた、私たちが日々享受している便利な技術も映画のような娯楽も、前例のないことを成し遂げたファースト・マンたちのおかげで存在しているのだと、改めて実感するのだ。

『ファースト・マン』
監督/デイミアン・チャゼル
出演/ライアン・ゴズリング、クレア・フォイ、ジェイソン・クラークほか
2018年 アメリカ映画 2時間21分 2月8日より全国の映画館にて公開。
https://firstman.jp

技術進歩や仲間の犠牲があって、初めての偉業が成し遂げられた。

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