学生時代からの仲間で生み出す、奔放なジャンル超越型サウンド

  • 文:山澤健治

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『ノー_ワン・エヴァー・リアリー・ダイズ』

N.E.R.D 

学生時代からの仲間で生み出す、奔放なジャンル超越型サウンド

山澤健治エディター╱音楽ジャーナリスト

ダフト・パンクの「ゲット・ラッキー」や自身のシングル「ハッピー」など大ヒットを連発し、〝キング・オブ・ポップ〞の称号がいま最も似合う男、ファレル・ウィリアムス。彼にとって、学生時代からの盟友3人で結成したN.E.R.Dは、売れ線や流行を気にせず、アグレッシヴにやりたい音楽を追求する実験室のような活動の場である。ヒップホップを軸にロックやパンクなどさまざまなジャンルの音楽を融合したサウンドは、自由奔放にしてやりたい放題。その音楽性は、ソロワークの趣向とは明確に一線を画する。 

7年ぶりとなる新作『ノー _ワン・エヴァー・リアリー・ダイズ』は、彼らの自由奔放ぶりがさらに際立つ内容となっている。トラップ系のヒップホップを中心に、ロック志向の高さも存分に発揮したサウンドは、ルール無用のジャンル超越型フリーフォーム。それも曲の中でソフトロックからスカへ、ダンスホール・レゲエからアイリッシュ・トラッドへと転調し、テンポやリズム、テクスチャーを劇的に変化させるものだから、映画『トランスフォーマー』のごとく「走ってきたトラックが突然君の耳の前で立ち上がってロボットに変身するような」曲というファレル独特の制作意図にも妙に説得力がある。とにかく、そのエネルギッシュさに頭より先に身体が反応するパーティ・チューンが目白押しなのだ。 

そうしたアッパーなサウンドや、ケンドリック・ラマー、アウトキャストのアンドレ3000、リアーナ、エド・シーランほか多数の人気者がゲスト参加する豪華絢爛ぶりに隠れがちだが、無実の黒人男性が妻の眼前で警官に射殺された事件を題材にした「ドント・ドント・ドゥ・イット!」など社会派メッセージソングが数多いのも今回の大きな特徴だろう。大人の不良音楽は、その実、まっとうに成熟の度合いを深めているのである。

高校の同級生だったファレル・ウィリアムス(右)、シェイ・ヘイリー(中)、チャド・ヒューゴ(左)の3人が結成したユニット。2001年、デビュー盤を発表。「誰も本当の意味では死なない」というグループ名を冠した5作目の新作『ノー _ワン・エヴァー・リアリー・ダイズ』で7年ぶりに本格再始動。

『ノー_ワン・エヴァー・リアリー・ダイズ』

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