語られなかった「代役」、スタントウーマンの激闘の物語。

語られなかった「代役」、スタントウーマンの激闘の物語。

文:てらさわホーク(映画ライター)

スタントウーマンたちの権利を守るための組合がつくられた過程など、ハリウッドの裏側で彼女たちがたどってきた歴史にも目を向けたドキュメンタリー。「ワイルド・スピード」シリーズのミシェル・ロドリゲスが製作総指揮を務める。 © STUNTWOMEN THE DOCUMENTARY LLC 2020 

【Penが選んだ、今月の観るべき1本】

スタントウーマンの名前を挙げてみろ、と言われてすぐに思い出せるのは「キル・ビル」シリーズ(2003~04年)でユマ・サーマンのアクション場面を演じて、その後同じくタランティーノの『デス・プルーフ』(07年)で堂々の主演を務めたゾーイ・ベルのことぐらいだろうか。あとはスカーレット・ヨハンソンの代役などで名前を聞くようになったハイディ・マネーメイカーのことを辛うじて思い出すが、正直に言えばその程度の知識しかない。人気女優の代わりに殴り殴られ、飛び、あるいは高所から落ち、壁や柱に衝突するスタントウーマンたち。スターの「代役」として正体を隠し、ひたすらアクションを見せる……彼女らの語られざる激闘に本作は光を当てている。

『ワンダーウーマン』(テレビシリーズ、1975~79年)に『マトリックス リローデッド』(2003年)、『ワイルド・スピード SKY MISSION』(15年)など、新旧の作品の見事なスタント・シーンがいくつも紹介される。しかしそうしたアクションの詰め合わせを期待すると、肩透かしを食らうかもしれない。派手な場面の裏にあるスタント女優の文字通り骨身を削るような仕事。そこを掘り下げることに、本作の目的と見どころがある。

3世代におよぶプロフェッショナルが次々に登場し、業界の歴史と実情、そして未来を語る。ただでさえ表に出ることの少ないスタント稼業にあって、女性たちはさらに軽んじられてきたという。ケガは付きもの、重大な後遺症を負うか、命を落とすことさえある。そんな厳しい仕事に打ち込み続ける女性たちに共通した目の据わり方、思わず居住まいを正したくなるような凄みを、映画は捉えている。近々やってくるアクション大作、たとえば『ブラック・ウィドウ』などを観る目に、新しいアングルを与えてくれるであろうドキュメンタリーだ。

© STUNTWOMEN THE DOCUMENTARY LLC 2020 

© STUNTWOMEN THE DOCUMENTARY LLC 2020 

『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』
監督/エイプリル・ライト
出演/ミシェル・ロドリゲス、ジーニー・エッパーほか 2020年 アメリカ映画
1時間24分 TOHOシネマズシャンテほかにて公開中。
http://stuntwomen-movie.com/

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