プーさんの愛らしい原画が日本へ! この『クマのプーさん展』は、大人こそ夢中になれます。

  • 文:はろるど

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『クマのプーさん』の初版本の表紙。イラストレーターのE.H.シェパードは、レイアウトや構図にもこだわって挿絵を描きました。『クマのプーさん』初版本、1926 年; メシュエン社によりロンドンにて出版; ジャロルド&サンズ社印刷、V&A 内ナショナル・アート図書館所蔵© Image courtesy of the Victoria and Albert Museum, London

ハチミツが大好きで、食いしん坊なプーさん。アニメーション作品でも絶大な人気を誇るプーさんは、世界一愛されているクマと言っても過言ではありません。
ですが、プーさんの原点について、どれほどのことが知られているでしょう? そもそも『クマのプーさん』とは、イギリスの作家、A.A.ミルンが、息子のクリストファー・ロビンとテディベアのプーをモデルに書いた児童文学。そこへ当時、イラストレーターとして活躍していたE.H.シェパードが挿絵を描き、1926年に出版されました。
現在、Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の『クマのプーさん展』では、シェパード直筆の鉛筆画やペン画の他、手紙や制作資料までもが一挙に公開されています。いずれもシェパードが生前にロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館に寄贈したもので、写真などを含めると200点以上におよび、圧巻です。展覧会は母国イギリス、次いでアメリカで開催され、日本へ巡回してきました。
展示は、大人こそ楽しめるような工夫が凝らされています。プーさんと仲間たちの物語を原画で辿っていくのはもちろん、スケッチと素描の比較や、構図案に着目することで、いかにシェパードが、細かな手直しを加えつつ、ページレイアウトにこだわって挿絵を描いていたのかがよくわかります。「初期とそれ以降に描かれたプーさんはどこが違う?」「チョッキの元々の色は赤じゃなかった?」など、プーさんの知られざるエピソードが明らかになります。
プーさんとの思い出は、多くの人の心の中にひとつやふたつあるはず。しかし、そんな楽しい記憶の背景に、これほど情熱的な制作過程があったことを知るのは新鮮です。50言語以上に翻訳され、いまもなお多くの読者を獲得し続ける『クマのプーさん』。さあ、ロンドンからやって来たプーさんに会いに出かけましょう。

カラマツの雑木林を歩くプーと仲良しのコブタ。愛らしい後ろ姿が印象的ですが、鋭い線を重ねたカラマツも存在感があります。「プーとコブタが、狩りに出て…」、『クマのプーさん』第3章、E.H.シェパード、ペン画、1926年、クライブ&アリソン・ビーチャム・コレクション © The Shepard Trust

作者のA.A.ミルンは、息子のクリストファー・ロビンとシェパード家にあったテディベアをモデルに作品を書きました。A.A.ミルン、クリストファー・ロビン・ミルンおよびプー・ベア、ハワード・コスター撮影、1926年 © National Portrait Gallery, London.

ハチミツの瓶を木の枝に並べるプーさん。1970年代、90歳だったシェパードが描いた原画です。当時のシェパードは視力が衰えていたため、原画のサイズを拡大して、水彩で色を加えました。「枝には、ハチミツのつぼが10ならんでいて、そのまんなかに、プーが…」、『クマのプーさん』第9章、E.H.シェパード、 ラインブロックプリント・手彩色、1970年 英国エグモント社所蔵 © E.H. Shepard colouring 1970 and 1973 © Ernest H. Shepard and Egmont UK Limited

『クマのプーさん展』

開催期間:2019年2月9日(土)~4月14日(日)
開催場所:Bunkamura ザ・ミュージアム
東京都渋谷区道玄坂2-24-1
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時~18時(金曜、土曜は21時まで)※入館は閉館の30分前まで。
休館日:2月19日(火)、3月12日(火)
入場料:一般¥1,500(税込)
https://wp2019.jp