豪華絢爛の『トルコ至宝展』、宝物がチューリップばかりの理由とは? 

豪華絢爛の『トルコ至宝展』、宝物がチューリップばかりの理由とは? 

文:はろるど

『ターバン飾り』17世紀 トプカプ宮殿博物館 ダイヤモンドやエメラルドをはめ込んだ豪華な飾り。下部の金と緑の花柄の筒は、七宝でつくられています。こうした貴石をあしらった宝飾品も見どころです。

アジアとヨーロッパの交易地として栄えた、トルコのイスタンブール。1453年にオスマン帝国の宮殿として建てられ、現在は9万点近い美術品を収蔵するトプカプ宮殿博物館の至宝が、東京の国立新美術館へとやって来ました。

鮮やかなチューリップに目が奪われます。『スルタン・スレイマン1世のものとされる儀式用カフタン』は、オスマン帝国最盛期のスルタンで、チューリップをこよなく愛したというスレイマン1世(在位1520〜1566)が着用したとされるもの。反りのある葉に挟まれた赤いチューリップの花の縦列文が、左右にずらされる形で織り込まれています。『詩集のワニス塗り表紙』の花文様にも、スミレやバラとともにチューリップの花束が。この他にも食器やタイル、花瓶、さらに盾にまで描かれていて、気がつけば右も左もチューリップばかりです。トプカプ宮殿が「チューリップの宮殿」と呼ばれるのも納得できます。

しかし、なぜチューリップなのでしょうか。トルコ語でチューリップとはラーレ。アラビア文字で表記したこのラーレの綴りの文字配列を変えると、イスラム教の神アッラーとなり、さらにラーレを語末から読むと、トルコ国旗に描かれたヒラールと言われる三日月を意味する言葉になるのです。つまりチューリップは、トルコにとって宗教や国家のシンボル。オスマン帝国の領内に自生したチューリップは、15世紀頃に栽培が盛んになり、16世紀には工芸品のモチーフとして定着します。最も流行したのは18世紀の前半。品種改良で2000種も生み出され、美術の題材にも多用され、「チューリップの時代」と名付けられました。

明治時代に遡る、日本との関わりも重要です。オスマン帝国で初めて訪日使節団を派遣したアブデュル・ハミト2世(1842〜1918)は、日本の美術工芸品に興味をもち、竹や七宝の家具を取り寄せて宮殿に飾りました。会場でも、日本がオスマン帝国に贈った調度品や甲冑、染付などを展示しています。華麗なトルコの美術品に心惹かれながら、アジア東西の交流史についても学べる展覧会です。

『詩集のワニス塗り表紙』18世紀前半 トプカプ宮殿博物館 複数のオスマンの詩人の抒情詩を収めた詩集に、チューリップなどの花束を表現した、ワニス塗りの表紙が付いています。小さな文様は単眼鏡がないとわからないほど細密に描かれています。

『スルタン・スレイマン1世のものとされる儀式用カフタン』16世紀中期 トプカプ宮殿博物館 イタリア製の織物でつくられたオスマン宮廷用の民族衣装です。クリーム色の地に、ルビー色のチューリップがあしらわれ、横糸には銀糸が用いられています。歴代のスルタンは権力を誇示するため、儀礼において、高級な金糸や銀糸で織られた衣装を着用しました。

『スルタン・アフメト3世の施水場模型』1893年8月16日 トプカプ宮殿博物館 チューリップの時代に君臨したアフメト3世(在位1703~1730)が、人々に水を供給すべく1728年に建設した『広場の施水場』を、20分の1スケールで再現した模型。チューリップの細かな浮き彫りが施され、トルコ・ロココと呼ばれた当時の建築の様式を見ることができます。

『トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美』

開催期間:2019年3月20日(水)~5月20日(月)
開催場所:国立新美術館 企画展示室2E
東京都港区六本木7-22-2
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時~18時(金曜、土曜および4月26日~5月5日は20時まで)
※入場は閉館の30分前まで
休館日:火(4月30日は開館)
入場料:一般¥1,600(税込)
https://turkey2019.exhn.jp

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