フランスでも注目されている写真家・富谷昌子の 「帰途」展に込められたメッセージとは?

  • 文・阿部博子

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©Masako Tomiya

青森県出身の写真家・富谷昌子さんの3年ぶりとなる個展「帰途—kito—」が、東京・恵比寿のPOST/limArtにて開催されています。前作の写真集『津軽』が世界各国で高く評価され、2014年から3年間撮りためた新シリーズ『帰途』がフランスの出版社Chose Commune社から発刊されたことを受けて、本書に収録された作品から約15点のプリント作品で構成された展覧会となっています。

本作『帰途』は、2014年夏から2017年2月にかけて東京から月に一度、故郷の青森に戻り、「わたし」や家族、青森の風景などを撮り続けた記録であり、富谷さん自身が永年のテーマとして考え続けている「わたしとは何か。この世界とは何か」を表現した作品群です。モノクロームの写真に収められた被写体に登場する作家自身と家族は、すべて女性。説明を受けなければ、ひとりの女性の一生を表しているようにも映り、時間、そして命に想いを馳せずにはいられません。「世の中にはわかりやすいこと、目を引く賑やかなことが目まぐるしいスピードで流れています。けれどもこの写真展を通して、自分とはなにか。生死とはなにかという、誰しも一度は思いを巡らせたことがある疑問を思い出すきっかけになれば」と富谷さんは語ります。「帰途」というタイトルには、本当の自分に戻るというメッセージも込められているのかもしれません。慌ただしい毎日の中でふと立ち止まり、忘れかけていた「わたし」に出会える。そんな時間を体験してみませんか?

©Masako Tomiya

富谷昌子写真展「帰途—kito-」

開催期間:〜8月13日(日)
開催場所:POST
東京都渋谷区恵比寿南2-10-3
開催時間:12時〜20時  
会期中無料
TEL:03-3713-8670
http://post-books.info/news/2017/7/22/exhibition-kito